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2016.12.26

DC・コミックス

マイク・ミニョーラがアートを手がけた傑作!
宇宙的危機の前にダークサイドがヒーローたちと手を結ぶ!?
『コズミック・オデッセイ』

今回ご紹介するのは、DCコミックスから1988年に刊行され、現在でも名作として高い評価を得ている『コズミック・オデッセイ』です。

ジャック・カービーが生んだ新しき神々

これまでDCユニバースでは、いくつもの宇宙規模の戦いをテーマとした作品が生みだされてきました。その中でも特に重要な意味を持ち、また多くのファンに愛されたシリーズが、70年代に描かれた『フォース・ワールド』です。
1970年、マーベル・コミックスの看板ヒーローたちの生みの親のひとりである超大物アーティスト、“ザ・キング”ことジャック・カービーが、なんとDCコミックスに移籍するという大きな出来事がありました。DCコミックスによって自由な環境を与えられたカービーは、彼が持つアイディアの集大成として『フォース・ワールド』シリーズをスタートさせます。
それはDCコミックスの別次元に創造された「フォース・ワールド」で、善神イザヤ・ハイファーザーが率いる惑星ニュージェネシスと、邪神ダークサイドが率いる惑星アポコリプスという、相容れることのできない善悪二陣営の新たなる神々「ニューゴッズ」たちが熾烈で壮大な戦いを繰り広げるというものでした。
後に多くのアーティストやキャラクター造形に影響を及ぼした『フォース・ワールド』シリーズですが、特にDCコミックス最大・最強のビラン、ダークサイドの誕生によって読者からの圧倒的な支持を集める人気シリーズへと成長しました。
しかし、その人気ゆえに編集側が物語に様々な干渉をし始め、わずか3年でジャック・カービーは『フォース・ワールド』から手を引くことに。物語は多くの謎を残したまま休眠状態となってしまいました。
その後、何度か『フォース・ワールド』シリーズの再生に向けた動きがありましたが、いずれも上手く行きませんでした。
しかし1988年、ついに『フォース・ワールド』に再び脚光が当たることになります。それが、本作『コズミック・オデッセイ』だったのです。

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ダークサイドが共闘に踏み切った真意は果たして……?

かつて「フォース・ワールド」でニュージェネシスと戦っていた頃から、ダークサイドが欲していた「反生命方程式」。
そしてダークサイド同様に方程式を追い求めていたニューゴッズのひとりメトロンが、その方程式を解き明かしたことから物語は始まります。
メトロンによって別次元から解放され、この宇宙に出現した4体の反生命の分身たち。彼らが銀河系を滅ぼさんとしていることを察し、自分ひとりではそれを阻止することができないと理解したダークサイドは、ひとつの大きな決断を下します。それは永年の宿敵ニュージェネシス、そして地球のヒーローたちとの共闘でした。
ダークサイドの「計画」によって召集されたのは、スーパーマン、バットマン、グリーン・ランタン(ジョン・スチュアート)、スターファイヤー、マーシャン・マンハンター、そしてエトリガン・ザ・デーモンと分離し平穏に暮らしていたジェイソン・ブラッドの6人。彼らはニュージェネシスと組み、宇宙の危機を救うべく反生命の分身たちを追います。しかしその裏ではやはり、一筋縄ではいかないダークサイドが己の野望のため、異なる策謀を巡らせていたでした……。


サノスの生みの親ジム・スターリン+ヘルボーイの生みの親マイク・ミニョーラ!

本作は、『フォース・ワールド』の復活であると共に、同年スタートする新シリーズ『ニューゴッズ』のプロローグとしての側面もありました。
ニューゴッズの面々がヒーローたちとコンビを組む展開は、連載終了から時間が空いてしまった『フォース・ワールド』シリーズのキャラクターである彼らの認知度をあげるためでもあったのです。
この複雑な背景を持った宇宙規模の物語を構築したライターは、ジム・スターリン。以前はマーベル・コミックスに在籍し、コズミック系ヒーローであるキャプテン・マーベルやウォーロックなどの物語を担当していました。マーベル・ユニバース最強ビランの一翼を担うタイタン人、サノスを生み出したのも彼です。SF的世界観や宇宙を舞台とした冒険ものの経験を積んできたスターリンは、本作において文化が異なる4つの惑星を背景に、ヒーローとニューゴッズの苦闘を壮大なスケールで書きあげていきました。
そして作画を担当しているのは、この後『ヘルボーイ』シリーズでその名を知らしめることになるマイク・ミニョーラ。宇宙を消し去る力を持つ反生命対ニューゴッズ&ヒーロー連合軍の戦いは、彼のハイコントラストかつ繊細なアートによって、独特の迫力と雰囲気を持った叙事詩へと昇華されたと言えるでしょう。
当時はヒーローものに違和感を抱いていたというミニョーラですが、この『コズミック・オデッセイ』の筆致からは、後に『ヘルボーイ』シリーズで確立された魅力的な表現に繋がるいくつものピースを見い出せます。本作のコズミック・ホラー的な物語もまた、『ヘルボーイ』の世界観に少なからず影響を与えていることでしょう。
またカラーリングも当時主流であった色指定による彩色ではなく、水彩が使われているのが本作の特徴です。ミニョーラの筆致と共に、緻密で流麗な彩色が世界観に深い味わいを与えています。
ジム・スターリンとマイク・ミニョーラという実力派の大物がタッグを組むことによって生まれた至高の名作をぜひ体感してください!

文・石井誠(ライター)


刊行中のマイク・ミニョーラ執筆作品

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2016.12.15

その他

『スター・ウォーズ・コミックシリーズガイド』配布開始(ダウンロードもできます!)

ヴィレッジブックス刊行のスター・ウォーズ関連タイトルを網羅した
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2016.12. 6

マーベル・コミックス

多元宇宙崩壊の危機にイルミナティ復活!
『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』

今回は邦訳第6弾であり、『ニューアベンジャーズ』第3期シリーズのスタートを切ると共に、「マーベルNOW!」が迎える初の大型クロスオーバー『インフィニティ』(2017年発売予定)へと繋がる作品『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』を紹介していきます。

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ニューアベンジャーズ』のタイトルは、これまで2004年~2010年まで続いた『ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト』から『シージ』までの第1期、2010年~2013年のルーク・ケイジを中心にチームが再編され、『ヒロイックエイジ』シリーズと絡んだ第2期(未邦訳)がありました。本作『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』は、マーベル全シリーズのリニューアルキャンペーン「マーベルNOW!」と合わせてスタートした第3期の冒頭エピソードにあたります。
この第3期『ニューアベンジャーズ』タイトルで活躍するのは、アイアンマン、Mr.ファンタスティック、Dr.ストレンジ、ブラックボルト、サブマリナーという、ヒーローコミュニティ内の重鎮たちが集まって結成した秘密結社「イルミナティ」のメンバー。
そこに、ワカンダの王ブラックパンサー、死亡したプロフェッサーXの代わりにインフィニティ・ジェムを受け継いだビーストが加わる形となっています。
秘密結社「イルミナティ」のメンバーが持つ背景は、『ニューアベンジャーズ』第1期内のミニシリーズとして展開した『ニューアベンジャーズ:イルミナティ』(通販限定)の物語を引き継いでいます。

シリーズ全編を通して語られる宇宙的危機「インカージョン」とは?

ブラックパンサーが治めるアフリカの小国ワカンダでの宇宙的異変を解明するため、再召集されたイルミナティの面々とキャプテン・アメリカ。
彼らは謎の女性、ブラックスワンによって、異なる次元に存在する地球同士が次々に引き合い衝突を起こす「インカ―ジョン」が起こっていることを知らされます。
自分たちが住む地球を守るためには、同様に人間が住む別次元の地球を破壊するべきなのか?
犠牲か、滅亡か。
ヒーローの中でもトップクラスの能力者で、人々を守るためならば一線を越える覚悟を持つイルミナティが選んだ結論とは?
本作ではこの多元宇宙の崩壊という巨大スケールの危機によって、彼らの厳しくも魅力的な一面が描き出されていきます。

『シビル・ウォー』に代表される第1期『ニューアベンジャーズ』シリーズの大型クロスオーバーでは、シリーズライターのブライアン・マイケル・ベンディスによって「正義と悪」「アメリカという国家や社会」などをテーマに、ヒーローのあり方が描かれてきました。
「マーベルNOW!」において、そうしたシリーズ全体の物語を紡ぐ役目は、ジョナサン・ヒックマンという新鋭のライターに受け継がれました。ヒックマンによるSFやファンタジー要素の強い、尋常ではない規模の物語は、かつての『クリー/スクラル戦争』、『シークレット・ウォーズ』、『インフィニティ・ガントレット』といった大作クロスオーバーで描かれた要素を、いかに現代的な形で甦らせ、表現していくかというテーマをも持っているのです。

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「マーベルNOW!」でリニューアルした各タイトルもそれぞれ大事件から物語のスタートを切っていますが、『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』はその物騒なサブタイトル(エブリシング・ダイ=すべてが死ぬ)の通り、そうした大事件を大幅に上回るレベルの事件が描かれます。
これと同じく宇宙的スケールの厄災が起きているのが発売中の『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』。宇宙を旅して種の再創生を行う者たちと、アベンジャーズの物語は、『アベンジャーズ:ラスト・ホワイト・イベント』(2017年1月発売)を経て本作『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』と合流。「マーベルNOW!」初となる大型クロスオーバーである『インフィニティ』へとなだれ込み、怒濤の展開を見せていきます。
来たる『インフィニティ』を楽しむためにも、シリーズ時系列順に『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』→『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』→『アベンジャーズ:ラスト・ホワイト・イベント』の三冊の通読がお勧めです!

文・石井誠(ライター)

2016.12. 2

正体を明かしたスパイダーマンに襲い掛かるヴィランたち!
『ピーター・パーカー スパイダーマン:シビル・ウォー』
雇われヒーロー集団は内戦にどうかかわったのか?
『ヒーローズ・フォー・ハイヤー:シビル・ウォー』

通販限定で展開してきた「シビル・ウォー・クロスオーバー・シリーズ」も、ついに最終シリーズとなる第3弾に突入。シリーズはこれまで、第1期7点、第2期7点、一般発売された『ニューアベンジャーズ:シビル・ウォー』の計15点が発売され、8月からスタートした第3期7点によってタイインコミックスが邦訳として揃うことになります。

今回は、第3期の1冊目『ピーター・パーカー スパイダーマン:シビル・ウォー』と2冊目の『ヒーローズ・フォー・ハイヤー:シビル・ウォー』をまとめて紹介していきましょう。

『ピーター・パーカー スパイダーマン:シビル・ウォー』

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『シビル・ウォー』のキーパーソンだったスパイダーマンが主役のタイインは、『アメイジング・スパイダーマン:シビル・ウォー』としてすでに発売されています。ここではピーターが、どのような経緯で賛成派から反対派に翻意することになったのかが克明に描かれました。そして本書『ピーター・パーカー、スパイダーマン:シビル・ウォー』は、その翻意の理由をさらに深掘りする1作と言えます。いうなれば、前者がスパイダーマンのヒーローとしての「公」の部分が描かれていて、『ピーター・パーカー、スパイダーマン:シビル・ウォー』は、「私」の部分が描かれているのです。

本作では、ピーターが世間に正体を明かしたために、事件に巻き込まれる3人の女性の物語が展開されます。その3人とは、ピーターの当時の妻であるメリージェーン・ワトソン、ピーターの叔母であり育ての親であるメイ・パーカー、そしてピーターのかつての恋人だったブラックキャットことフェリシア・ハーディ。

本作は2部構成となっています。第1部はスパイダーマンが自身の正体を世間に明かした直後、そして第2部は、反対派に与する道を選んだ後が舞台です。正体を知ったカメレオンらスパイダーマンに深い恨みを持つヴィランたちは、その妻のMJ、叔母のメイまでも標的にします。自分だけでは彼女達を守りきれないと考えたピーターは、かつての恋人であるブラックキャットに、MJやメイを守って欲しいと頼みます。正体を明かしたことで大きく変わってしまった状況の中、彼らはどのように考え、行動するのか? ピーターだけでなく、3人の女性の思いが描かれる物語となっています。

『ヒーローズ・フォー・ハイヤー:シビル・ウォー』

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ヒーローズ・フォー・ハイヤー(雇われヒーロー達)と言えば、ルーク・ケイジの二つ名(ヒーロー・フォー・ハイヤー)であり、彼とコンビを組んだアイアン・フィストが立ち上げたヒーロー事務所の名称ですが、本作はその二人は関係なく、お金をもらってヒーロー活動をするチームであるというだけです。さらに登場するヒーローは、ブラックキャット以外はマイナーなキャラクターばかり。なら地味で面白くないのか……と思ってしまいそうですが、読んでみるととても楽しめる内容になっています。

本作『ヒーローズ・フォー・ハイヤー:シビル・ウォー』、『シビル・ウォー』のスタートに合わせて立ち上げられたシリーズで、7人からなるメンバーで構成されたチームものです。

元ニューヨーク市警の警官で爆破事件によって右腕を失い、トニー・スタークが作ったバイオニックアームを取り付けたミスティ・ナイト(NETFLIXのドラマ『ルーク・ケイジ』でも活躍しているキャラクター)。

その相棒の、日米ハーフで、侍の血を引く祖父から武道を学んだ日本刀使いコリーン・ウイング。

この2人を中心に活動するヒーローチームが、新生「ヒーローズ・フォー・ハイヤー」です。彼女たちには、内戦に突入したほかのヒーローのような思想的な背景はなく、混乱に乗じて暴れるヴィランの鎮圧や、潜伏している超人登録法反対派のヒーローたちの捜索などを行うことで報酬を得るという、清々しいくらい分かりやすい理由で行動します。そんな「金のためのヒーロー活動」の最中、移植すれば別人の外見に変身できる人造臓器の捜査をきっかけに、彼らは大きな事件に巻き込まれていきます。

これまでのシビル・ウォー・クロスオーバー・シリーズの多くは、賛成、反対、中立、不干渉という立場をとる各キャラクターの主義主張を掘り下げる物語がほとんどで、結果、重厚な内容のものになっていました。それに対して、登録法への主義主張がそれほどないヒーローたちの姿を描いているのが、『ヒーローズ・フォー・ハイヤー』だと言えるでしょう。彼女たちは超人登録法の賛成派寄りながらも、反対派と敵対しません。昆虫を自在に操る中年男のハンバグや、30年以上前のカンフーブーム時に登場したシャン・チーといったメンバーが醸し出すコミカルさは、『シビル・ウォー』シリーズに漂う重い空気の中では、肩の凝らない清涼剤的な雰囲気を作り出しているように思えます。ヒーローコミックスの新たな一面を感じさせてくれる1冊と言えるかもしれません。

『ピーター・パーカー スパイダーマン:シビル・ウォー』と『ヒーローズ・フォー・ハイヤー:シビル・ウォー』。この2冊を読めば『シビル・ウォー』の持つ奥深さをより実感できるはずです。

2016.11.22

マーベル・コミックス

監査官の追及からベイダーは逃れられるのか?
『スター・ウォーズ:ダースベイター 偽りの忠誠』

12月14日の公開まで1ヶ月を切った、『スター・ウォーズ』のスピン・オフ作品となる『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』。最新の予告編では、ついにダース・ベイダーも登場し、ファンとしては盛り上がらずにはいられない状態です。そして何より『エピソードⅣ/新たなる希望』につながる物語ということもあって、昨年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に負けず劣らず事前の期待値が高まっているのではないでしょうか。

そんなスター・ウォーズが世間的に盛り上がる中、今日は『エピソードⅣ/新たなる希望』直後のダース・ベイダーを描くコミック版『ダース・ベイダー』シリーズの第2弾となる『スター・ウォーズ:ダースベイター 偽りの忠誠』を紹介します。

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自身が計画した強奪事件を隠蔽&捜査!

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シリーズ1作目『スター・ウォーズ:ダース・ベイダー』((紹介記事はこちら、『エピソードⅣ/新たなる希望』でのデス・スター破壊により降格されてしまったダース・ベイダーが、失地回復すべく極秘で行動をおこす姿が描かれました。ベイダーは女性盗賊考古学者のドクター・アフラ、拷問ドロイドのトリプルゼロ、暗殺アストロメクドロイドのBT-1と行動を共にし、ドロイドで構成された私兵部隊を作り上げます。その一方でベイダーは、賞金稼ぎのボバ・フェットを雇い、デス・スターの破壊に貢献したある反乱軍パイロットの正体を探らせていました。その結果、探していたパイロットが、それまで存在をも知らなかった実の息子であることがわかり、ベイダーは息子を自分のもとに引き入れることを考えるようになります。

1作目でのこうした状況を踏まえてスタートした本作。その冒頭で、ベイダーはドクター・アフラと共にタトゥイーンに降り立ち、かつてルークが住んでいた家、そしてオビ=ワン・ケノービが隠遁していた住まいを訪れます。そこでベイダーは、彼らのこれまでの生活と、ルークとボバ・フェットとの戦いの痕跡から、ルークがまだジェダイとなるための修行を積んでいないことを知ります。ベイダーはルークを探索すべく、ドクター・アフラに新たな極秘任務を任せます。

それはベイダーが自ら押収し、帝国軍の輸送船に運ばせていたクレジットを、自らの目的達成の資金とするため、強奪するというものでした。ドクター・アフラはその任務を遂行するため、名うての賞金稼ぎを雇い、クレジットの強奪に成功します。しかしその後、ベイダーには自身が企てた強奪事件の犯人を捕まえるという任務が与えられます。有能で抜け目のないサノス監査官に見張られながら、ベイダーはドクター・アフラの跡を追うことになるのですが…。

強奪作戦の隠蔽と捜査を同時に行うベイダーは、どう事態を収束させていくのでしょう?事態をうまく乗り切れるかと思いきや、すぐに新たな不都合が生まれ、それを解決するためにまた行動し…という目まぐるしい展開は、これまでのスター・ウォーズ作品にはないものです。

また、1作目同様、ダース・ベイダーとドクター・アフラの奇妙なバディ関係が印象的な本作ですが、それ以上に目を引くのが、ダース・ベイダーのルークへの執着です。ルークのこれまでのいきさつを知り、感情が揺さぶられるベイダー。それは、彼が人間的な感情を取り戻しているようにも見えます。そして、その思いは『エピソード6/ジェダイの帰還』の終盤の展開にもつながります。『スター・ウォーズ:ダースベイター 偽りの忠誠』は、そんなベイダーの心の動きを再確認させてくれる1冊となっています。

文・石井誠(ライター)

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ドクター・ストレンジ:ウェイ・オブ・ウィアード

ジェイソン・アーロン=著

クリス・バチャロ=絵

御代しおり=翻訳

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