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2017.01.19

DC・コミックス

アレックス・ロスの超絶アートとDCコミックス愛が炸裂!
『ジャスティス Vol.1&2』

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今回は『ジャスティス Vol.1』『ジャスティス Vol.2』をまとめてご紹介いたします。
圧倒的な画力とリアルな絵画的な表現によって、『キングダム・カム』『マーヴルズ』といった伝説的名作を手がけ、コミックアート界に絶対的な地位を築いたアレックス・ロス。
彼の手がける作品は、キャラクターがその世界で息づき生活していることがありありと伝わってくるような、体温のあるリアリティが特徴的です。
これらのアートは、ひとつひとつのシーンごとに、モデルとなる人物の写真を撮り、光の当たり具合までも研究し尽くした、ロス特有の緻密な技法で描かれています。実際のモデルを使いながらも平板なリアリズムに陥ることなく、実に活き活きとした表情で立ち振る舞うキャラクター、それに写実性とドラマ性を兼ね備えた色使いと描写が加わることで、虚構を越えた世界観を作り出しているのです。

しかし当然のことながら、このような手法をとるロスのアート制作には、他のアーティストに比べて大きな手間がかかるため、どうしても寡作になってしまいます。その結果、アレックス・ロスがコミックス本編のアートを手掛けることはなかなか無いのも事実。
そんな数少ないアレックス・ロス作品の中で、最大級のボリュームをもって描かれたのが本書『ジャスティス』なのです。
この作品制作を可能としたのは、ペンシラーにダグ・ブレイスウェイト、共同原作にジム・クルーガーを迎えたチーム編成です。アレックス・ロスの担当は共同原作とカラーリングですが、ダグ・ブレイスウェイトの高い画力、構成力が非常にマッチしており、これまでのロス作品に勝るとも劣らない超絶クオリティを生みだしています。
「ジャスティス(正義)」という直球なタイトルは、企画段階では『VS.』というタイトルでしたが、本書はその名の通り、スーパーヒーロー連合とスーパービラン連合の全面対決を通して「正義」の在り方を問う、アレックス・ロスのDCコミックスへの、ひいてはスーパーヒーローコミックへの愛情が結晶化したかのような一冊と言えるでしょう。

改心したスーパービランたちに追いつめられるジャスティス・リーグ!

物語は、スーパービランたちが繰り返し見続けている、ある「悪夢」から始まります。
地球滅亡の日、炎に包まれた世界でなすすべもなく倒れるジャスティス・リーグ・オブ・アメリカの面々。
世界が破滅してしまっては、当然ながらビランたちの生きる場所も無くなってしまいます。そんな事態に陥るまで、ジャスティス・リーグは一体何をしていたのか? この悪夢は現実のものになると考え、怒りに駆られたビランたちは、レックス・ルーサーの号令の元、リージョン・オブ・ドゥームを結成。ヒーローたちに代わって人々をより善き世界に導くため、行動を起こし始めました。
ポイズン・アイビーによる砂漠の緑地化など、今まで犯罪に使ってきた自らの能力を、人類の救済に向けるビランたち。そしてルーサーを中心としたビランたちは、「ジャスティス・リーグの面々は、十分な能力を持ちながらもそれを使ってこなかったことで、格差と貧困を肯定し続けてきたのだ」という告発を全世界に向けて行ったのです。
人々の心がジャスティス・リーグから離れる中、ビラン達は、各ヒーローの弱点をついた攻撃を仕掛け、彼らは追い詰められていきます。そして苦境の中、ヒーロー達はビランの背後にある人物がいることに気づきます。黒幕の真の目的とは何なのか? 彼らはその謎を解き、巻き返しをはかるべく行動を開始します。

正義vs.正義

この物語は『NEW52』シリーズなどDCの中心的な世界観とは異なる、本書独自の世界観で展開されています。
基調となっているのはアレックス・ロスが一番思い入れのあるシルバーエイジのデザインと設定ですが、端々に新たな設定が取り込まれていますし、物語やキャラクターの持つテーマ性は現代的なものとなっています。
またビランたちは、いつものように悪事をなそうとせず、世界を良くするために行動しようとしています。こうしたビランの「正義」に対し、傷を負いながらも勇気を奮い起こし、自分の信じてきた「正義」をもって抗しようとするヒーローたちの姿は、読む者に正義とは何なのかという問いを呼び起こすことでしょう。
またこうした大作クロスオーバーならではの、各キャラクターの異なる立場や心情の描写も奥深く、アレックス・ロスの美しい絵と相まって、一大叙事詩と呼べるようなスケール感のある物語に仕上がっています。

重厚なストーリーや絵もさることながら、それ以外にも、スーパービラン連合にハブられてしまったジョーカーや、美麗なアートで描かれるプラスチックマンとエロンゲイテッドマンの伸び人間対決(?)など、細部にネタが仕込まれており、読むたびに新たな発見があることは間違いありません。

多数のキャラクター、複雑かつ重厚な物語……と、こう説明すると、DCコミックスに対する深い知識が必要な作品と感じられるかもしれません。しかし読んでみるとまったくそんなことはありません。読みやすさは抜群ですし、むしろこの作品から読み始めても問題なく楽しめる王道の面白さで、ヒーローコミックの入り口としてもオススメできる一冊です。
何よりアメコミファンならずとも一度は触れておきたいアレックス・ロスのアートを、長編で思う存分堪能できるのです。1コマ1コマを額に入れて飾りたいくらいのクオリティのアートが、めくってもめくっても続いていく感動は計り知れません。ぜひアレックス・ロスが心血を注いで制作した、この記念碑的な作品を読んでいただきたいと思います。

文・石井誠(ライター)

2016.12.26

DC・コミックス

マイク・ミニョーラがアートを手がけた傑作!
宇宙的危機の前にダークサイドがヒーローたちと手を結ぶ!?
『コズミック・オデッセイ』

今回ご紹介するのは、DCコミックスから1988年に刊行され、現在でも名作として高い評価を得ている『コズミック・オデッセイ』です。

ジャック・カービーが生んだ新しき神々

これまでDCユニバースでは、いくつもの宇宙規模の戦いをテーマとした作品が生みだされてきました。その中でも特に重要な意味を持ち、また多くのファンに愛されたシリーズが、70年代に描かれた『フォース・ワールド』です。
1970年、マーベル・コミックスの看板ヒーローたちの生みの親のひとりである超大物アーティスト、“ザ・キング”ことジャック・カービーが、なんとDCコミックスに移籍するという大きな出来事がありました。DCコミックスによって自由な環境を与えられたカービーは、彼が持つアイディアの集大成として『フォース・ワールド』シリーズをスタートさせます。
それはDCコミックスの別次元に創造された「フォース・ワールド」で、善神イザヤ・ハイファーザーが率いる惑星ニュージェネシスと、邪神ダークサイドが率いる惑星アポコリプスという、相容れることのできない善悪二陣営の新たなる神々「ニューゴッズ」たちが熾烈で壮大な戦いを繰り広げるというものでした。
後に多くのアーティストやキャラクター造形に影響を及ぼした『フォース・ワールド』シリーズですが、特にDCコミックス最大・最強のビラン、ダークサイドの誕生によって読者からの圧倒的な支持を集める人気シリーズへと成長しました。
しかし、その人気ゆえに編集側が物語に様々な干渉をし始め、わずか3年でジャック・カービーは『フォース・ワールド』から手を引くことに。物語は多くの謎を残したまま休眠状態となってしまいました。
その後、何度か『フォース・ワールド』シリーズの再生に向けた動きがありましたが、いずれも上手く行きませんでした。
しかし1988年、ついに『フォース・ワールド』に再び脚光が当たることになります。それが、本作『コズミック・オデッセイ』だったのです。

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ダークサイドが共闘に踏み切った真意は果たして……?

かつて「フォース・ワールド」でニュージェネシスと戦っていた頃から、ダークサイドが欲していた「反生命方程式」。
そしてダークサイド同様に方程式を追い求めていたニューゴッズのひとりメトロンが、その方程式を解き明かしたことから物語は始まります。
メトロンによって別次元から解放され、この宇宙に出現した4体の反生命の分身たち。彼らが銀河系を滅ぼさんとしていることを察し、自分ひとりではそれを阻止することができないと理解したダークサイドは、ひとつの大きな決断を下します。それは永年の宿敵ニュージェネシス、そして地球のヒーローたちとの共闘でした。
ダークサイドの「計画」によって召集されたのは、スーパーマン、バットマン、グリーン・ランタン(ジョン・スチュアート)、スターファイヤー、マーシャン・マンハンター、そしてエトリガン・ザ・デーモンと分離し平穏に暮らしていたジェイソン・ブラッドの6人。彼らはニュージェネシスと組み、宇宙の危機を救うべく反生命の分身たちを追います。しかしその裏ではやはり、一筋縄ではいかないダークサイドが己の野望のため、異なる策謀を巡らせていたでした……。


サノスの生みの親ジム・スターリン+ヘルボーイの生みの親マイク・ミニョーラ!

本作は、『フォース・ワールド』の復活であると共に、同年スタートする新シリーズ『ニューゴッズ』のプロローグとしての側面もありました。
ニューゴッズの面々がヒーローたちとコンビを組む展開は、連載終了から時間が空いてしまった『フォース・ワールド』シリーズのキャラクターである彼らの認知度をあげるためでもあったのです。
この複雑な背景を持った宇宙規模の物語を構築したライターは、ジム・スターリン。以前はマーベル・コミックスに在籍し、コズミック系ヒーローであるキャプテン・マーベルやウォーロックなどの物語を担当していました。マーベル・ユニバース最強ビランの一翼を担うタイタン人、サノスを生み出したのも彼です。SF的世界観や宇宙を舞台とした冒険ものの経験を積んできたスターリンは、本作において文化が異なる4つの惑星を背景に、ヒーローとニューゴッズの苦闘を壮大なスケールで書きあげていきました。
そして作画を担当しているのは、この後『ヘルボーイ』シリーズでその名を知らしめることになるマイク・ミニョーラ。宇宙を消し去る力を持つ反生命対ニューゴッズ&ヒーロー連合軍の戦いは、彼のハイコントラストかつ繊細なアートによって、独特の迫力と雰囲気を持った叙事詩へと昇華されたと言えるでしょう。
当時はヒーローものに違和感を抱いていたというミニョーラですが、この『コズミック・オデッセイ』の筆致からは、後に『ヘルボーイ』シリーズで確立された魅力的な表現に繋がるいくつものピースを見い出せます。本作のコズミック・ホラー的な物語もまた、『ヘルボーイ』の世界観に少なからず影響を与えていることでしょう。
またカラーリングも当時主流であった色指定による彩色ではなく、水彩が使われているのが本作の特徴です。ミニョーラの筆致と共に、緻密で流麗な彩色が世界観に深い味わいを与えています。
ジム・スターリンとマイク・ミニョーラという実力派の大物がタッグを組むことによって生まれた至高の名作をぜひ体感してください!

文・石井誠(ライター)


刊行中のマイク・ミニョーラ執筆作品

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2016.09.21

DC・コミックス

いろんなハーレイが楽しめる1冊!
『バットマン:ハーレイ・クイン』

映画公開!ハーレイ・クイン人気爆発!

9月10日に、日本でもついにDCユニバースの実写映画化プロジェクト「DCフィルムズ」の第3弾『スーサイド・スクワッド』が公開されました。

知名度が高いとは言えないヴィランを集めたチームものの映画化ということで、当初は作品のヒットを不安視するファンも少なくなかったのですが、蓋を開けてみれば、米国では8月公開映画のオープニング興行収入歴代1位を記録し、全世界でも大ヒット、今後も展開するDCフィルムズにとって幸先のいいスタートとなりました。

この『スーサイド・スクワッド』がヒットした最大の要因を挙げるとすれば、実質的な主役と言っても過言ではないマーゴット・ロビーが演じるハーレイ・クインの魅力と存在感にあると言えるでしょう。

スーパーマンなどの特殊能力を持つ「メタヒューマン」が政府に対して敵対した場合に備え、政府の手足となってメタヒューマンを相手とした危険なミッションにあたる「特殊部隊」の創設が提案されます。そこで収監されている特殊能力を持つヴィランを集め、それを取りまとめる軍関係者との共同チーム、通称、スーサイド・スクワッド(自殺部隊)が組織されることになります。

映画の中でのハーレイ・クインは、ジョーカーと共に暴れ回っている最中にバットマンに捕らえられて収監。その後、スーサイド・スクワッドのメンバーに選出されることになります。ハーレイ・クインを含めて、スーサイド・スクワッドは10人のメンバーで構成されますが、他のメンバーはそれぞれが違った葛藤や問題を抱えています。

一方、ジョーカーという「絶対悪」に触れた結果、自己開放するという形でヴィランとなったハーレイ・クインは、無邪気で純粋な「悪」としての人生を謳歌しており、だからこそチームのムードメーカーとして機能しつつ、「悪として生きる真理」を体現していくことになります。

そして、自らの心情に素直に生きる彼女の言動が、チームのメンバーにも大きな影響を与えていき、それが物語を引っ張っていくことになります。精神面でのチームの要として、ハーレイ・クインは間違いなく『スーサイド・スクワッド』における主人公のように描かれています。

セクシーでスタイリッシュなファッション、自分に正直にいるという生き様、「悪いけど可愛らしい」言動。これらがマッチした結果、ハーレイ・クインは男女を問わず大きく支持されることになったわけです。原作コミックスで活躍している頃から、その人気のポテンシャルは高いと思われていましたが、実写化にあたってマーゴット・ロビーが演じたことによって、キャラクターの魅力が一般に認知されるレベルで大きく開花し、それが映画のヒットにもつながりました。

全10編のハーレイの物語を収録!

映画でハーレイ・クインの魅力にやられた人なら、やはり原作コミックスでの彼女の活躍が読みたくなるはずです。そこでオススメとなるのが、今回ご紹介する『バットマン:ハーレイ・クイン』です。

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ハーレイ・クインはもともと1992年に放送されていたアニメ版『バットマン』でデビューを飾ったキャラクターで、当初はその初登場回のみに登場するだけの予定でした。しかし、そのキャラクターの完成度の高さからアニメシリーズ内で準レギュラー化。のちにアニメシリーズのコミカライズという形で、コミックス誌面に登場し、着実に人気を獲得していきます。そして、アニメ登場から7年を経て、アニメシリーズのキャラクターが、本家DCユニバースに逆輸入されるというこれまでにない形で、彼女は活躍するようになります。

本誌では、ハーレイがDCユニバースのデビュー作をはじめ、さまざまな角度からハーレイの魅力に迫る中編&短編、全10編が掲載されています。以下から主なエピソードを簡単に紹介していきます。

『バットマン:ハーレイ・クイン』#1
これが彼女のDCユニバースデビュー作。彼女がこれまでにどのような経緯でジョーカーと出会い、ヴィランになったのかが語られます。ハーレイの性格や人間性が丁寧に描かれており、まさにハーレイを知るための基本エピソードと言える内容になっています。

ちなみに本作は、ゴッサムシティが大地震によって壊滅し、その大混乱に乗じてスーパーヴィランたちが街の覇権を巡って争っている状況――つまり、ゴッサムシティの秩序を取り戻すべく奔走するバットマンの活躍を描いた大型クロスオーバー「ノーマンズ・ランド」と同時期に起きています。

『バットマン:ゴッサムナイツ』#14
アニメ版『バットマン』登場時のキャラクターデザイン版のハーレイが登場。アーカム・アサイラムに収監された彼女の、ポイズン・アイビーとのやりとりが描かれる。

『ディテクティブコミックス』v1 #831
スカーフェイスの陰謀によって悪事に荷担させられるも、バットマンと一時的に共闘するハーレイ。

『ディテクティブコミックス』v1 #837
更正して私立探偵として活躍していたリドラーと協力し、アマゾン族を巻き込んだ事件の解決に挑む。

『ジョーカーズ・アサイラム:ハーレイ・クイン』#1
バレンタイン・デーに愛しのジョーカーに会うため、アーカム・アサイラムを脱走したハーレイ。しかしジョーカーの元にたどり着いた彼女を待っていたのは…。

『バットマン:ブラック&ホワイト』#3
変質者の元から逃げのびてきた少女。助けを求められたハーレイとポイズン・アイビーは…。

『レジェンズ・オブ・ダークナイト 100ページ・スーパースペクタキュラー』#1
ジョーカーの計画遂行の時間稼ぎのため、ハーレイはバットマンの足止めを試みる。彼女は元精神科医らしくバットマンの精神分析を行うが…。

『ディテクティブコミックス』v2 #23.2
スーサイド・スクワッドへ参加後、自由の身となったハーレイが改めて自分の人生を振り返る。

決して極悪人ではなく、その時の気分によっては人助けをしたり、犯罪解決に協力したりと、一般的なヴィランの枠組みに収まらないハーレイ・クイン。そのキャラクターの魅力をこのエピソード群で存分に触れることができます。原作で描かれる彼女の魅力に触れれば、映画『スーサイド・スクワッド』でのハーレイの印象もまた変わってくるはずです。

ちなみに、映画のヒットを受けて、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインの単独映画化も決定。今後もまだまだ続く彼女の悪カワな活躍にも期待しちゃいましょう。

文・石井誠(ライター)

2016.09. 9

DC・コミックス

シリーズ第2弾!スーパーガールついに復活!
『スーパーマン/バットマン:スーパーガール』

現在、テレビドラマシリーズ『スーパーガール』がアメコミファンから大きな注目を集めています。日本では海外ドラマ専門チャンネルAXNにて放送され、9月14日にはブルーレイ&DVDが発売されるので、この話題作をこれから観ようという方も多いでしょう。

テレビドラマ版『スーパーガール』は、いとこであるスーパーマンと共に地球へと飛来し、その出生の秘密を隠しながら生活してきたカーラ・ゾー=エルの「スーパーヒロイン/一般人」としての二重生活と、彼女のサクセスストーリーが描かれています。彼女は、普段はナショナルシティのメディア女王と言われるキャット・グランドのもとでアシスタントとして働きつつも、ひとたび事件がおこればスーパーガールとして大活躍します。TVドラマ『glee/グリー』や映画『セッション』での演技が注目された、若手女優メリッサ・ブノワがスーパーガールを演じ、そのキュートな雰囲気がファンを魅了。さらにストーリーは他のDCのドラマシリーズとクロスオーバーがあり、作品としても高い評価を得ています。シーズン2ではついにスーパーマンが登場することも発表され、その展開から目が離せない作品だと言えるでしょう。

「クライシス」で戦死したスーパーガールの復活

TVドラマ化で注目を浴びるスーパーガール。今回は、その彼女が活躍するアメコミ、スーパーマンとバットマン初のチームアップ誌としてスタートした『スーパーマン/バットマン:パブリック・エネミー』(紹介記事はこちら)に続くシリーズ第2弾となる『スーパーマン/バットマン:スーパーガール』をご紹介します。

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スーパーガールは、現在のドラマ版以前にも1984年に映画化されている上、”女性版スーパーマン”というわかりやすいイメージを持っているため、日本でも比較的、知名度の高いキャラクターです。しかし、その知名度の高さに反して、彼女のDCユニバースにおける設定はかなり複雑です。

スーパーガールと言えば、「スーパーマンのいとこ」という設定が定説ですが、実はその設定自体は、長い間封印されていたのです。

1985年のクロスオーバー大作『クライシス・オン・インフィニット・アース』(紹介記事はこちら)にて、スーパーガールは読者に鮮烈な印象を残す戦死を遂げています。この戦死のインパクトが強かったためか、アメコミキャラクターによくある「死からの復活」が、スーパーガールにはすぐに採られませんでした。

1988年、スーパーガールは復活したかに見えたものの、それは異次元世界から来た人造人間でした。その後、その人造人間が人間の少女と合体したり、クラークとロイスの娘で自分は未来からやってきたと主張するキャラクターとして登場するなど、それまでのオリジナルである「スーパーマンのいとこ」という形はとられませんでした。

そうした紆余曲折を経て、ようやくファンが待ち望む「オリジナル設定」でのスーパーガール復活が描かれることになります。それが、2004年に発売された本作『スーパーマン/バットマン:スーパーガール』だったのです。

マイケル・ターナーの美しいアートにも注目!

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物語は、前作『スーパーマン/バットマン:パブリック・エネミー』の直後からスタートします。

地球を消滅させるほどの大きさを持つクリプトナイト隕石の脅威は、前作でのスーパーマンとバットマンの活躍によって回避されたものの、地球には大量のクリプトナイトが落下しました。バットマンがその破片を分析すべく、海底で収集していると、そこで乗物と思われる物体を発見します。それを調べるバットマンを尻目に、乗物に乗っていたと思われる人物は、バットマンの乗ってきたバットボートを奪い,ゴッサムシティへと上陸します。

ゴッサムシティに降り立ったのは、一糸まとわぬ少女でした。彼女を追ったバットマンは、その人並外れたパワーを目の当たりにし、その力の由来はスーパーマンと同じではないかと考え、クリプトナイトを使って彼女を保護します。その後、保護された彼女の前にスーパーマンが現れ、彼女がいとこであるカーラ・ゾー=エルであることがわかるのでした。

同胞との出会いに喜ぶスーパーマンですが、その一方で突如地球に現れたカーラ・ゾー=エルの存在は注目を集めることになります。そして、ある強大な力を持つヴィランまでもが動き始めるのでした。

「スーパーマンのいとこ」というオリジナル設定で復活を遂げるスーパーガールは、最初から「完全復活」ではなく、「能力がまだ覚醒していない」「ほかのヒーローと理解を深める」という部分が描かれ、さらにはほかの有名キャラクターが多数絡むことで、物語は思わぬ方向へと進んでいき、ファン待望のスーパーガール復活劇は大いに盛り上がっていきます。

ただし、本作はあくまで、スーパーマンとバットマンの2人が主人公なので、カーラをそれぞれがどう考えていて、その考えの違いによって起きる対立が、それぞれのモノローグで語られていきます。

本作ではメインキャラのカーラ以外に、ワンダーウーマンやアマゾネスなどの女性キャラクターが多数登場します。そのためか作品も華やかで、彼女達が活躍するアートも大きな見所となっています。アートを担当したのは、女性キャラクターを魅力的に描くことで大きな注目を集めていたマイケル・ターナー。彼は、イメージコミックス内のスタジオ、トップ・カウ・プロダクションに所属し『ウィッチブレード』を世に送り出したことでも有名です。彼の描く女性キャラクターは、その後のアメコミでの女性描写に多大な影響を与えたと言われています。マイケル・ターナーは、2008年に若くして他界してしまいましたが、本書では彼の描くスーパーガールやワンダーウーマンの魅力を存分に味わうことができるので、それだけでも、本書を読む価値はあるでしょう。

先の読めない怒濤の展開と、美しいアートの織りなす本作は、ドラマ版『スーパーガール』に魅了されたファンへの「スーパーガール入門編』としてもうってつけです。

文・石井誠(ライター)

2016.03.31

DC・コミックス

【石井誠のアメコミレビュー】
スーパーマン/バットマン:パブリック・エネミー

実は名コンビのバットマンとスーパーマン

DCコミックスのスーパーヒーローたちが世界観を共有した映画シリーズ「DCエクステンディッドユニバース」(以下、DCEU)。その第2弾となる『バットマン vs スーパーマン:ジャスティスの誕生』がついに公開となりました。そのタイトルが指し示す通り、バットマンとスーパーマンの「対決」がフィーチャーされています。

しかしながら、アメコミファンならばご存じの通り、原作コミックスにおいては、バットマンとスーパーマンは互いの理念に違いはありつつも、尊敬しあい、ときには共通の敵を倒すべく共闘もします。手を組んだ二人は「ワールズ・ファイネスト」(世界最高のチーム)と呼ばれるほどの名コンビとして活躍し続け、同名のレギュラー誌も300号を超える長期連載がされていたほどです。

どちらかがヴィランに操られて対決することや、考え方の違いから仲違いすることはあっても、二人はコミックでは「名コンビ」として描かれることの方が多いのです。

とはいえ、この名コンビも『クライシス・オン・インフィニット・アース』を契機としたDCユニバースのリランチのタイミングでコンビを解消。ときおり共闘することはあっても、かつてのようなコンビでの活躍はあまり見ることができなくなってしまいました。

そんな状況が長く続く中、2003年に『スーパーマン/バットマン』というタイトルで、2人が再びコンビを組むレギュラー誌がスタートすることになります。本作『スーパーマン/バットマン:パブリック・エネミー』は、その創刊号から6号にかけて描かれたエピソードを収録したものとなっています。

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ックス・ルーサー大統領&飛来する巨大隕石!

本作は、2011年にDCユニバースの設定が変更された「NEW52!」以前の2003年に描かれたものです。1999年から2000年にかけて、スーパーマンの宿敵であるレックス・ルーサーがアメリカ大統領に就任するという大きな事件がDCユニバースではありました。『スーパーマン/バットマン』は、そうした最悪とも言える状況を踏まえたものになっています。

物語は、スーパーマンとバットマンの再会からスタートします。対スーパーマン用に作られたサイボーグ・メタロが民間研究機関スターラボを襲撃したため、スーパーマンは戦いを挑みます。一方、バットマンはゴッサムシティの墓地で荒らされた墓に残された物証を探していました。その墓の持ち主は、ジョン・コーベン。彼はメタロに改造された男であり、その墓には彼の遺体の大部分が埋められていたのでした。

ジョン・コーベンの墓で再会したスーパーマンとバットマンですが、そこに現れたメタロの強襲を受け、スーパーマンは重傷を負い、バットマンともども生き埋めにされてしまいます。なんとか窮地から脱出した二人ですが、そんな彼らを、今度は未来からやってきた壮年のスーパーマンが襲撃します。

一方、太陽系の端では別の脅威が迫っていました。それは、スーパーマンの故郷である惑星クリプトンの破片である、クリプトナイトの飛来です。オーストラリア大陸に匹敵するほど巨大な隕石で、地球に衝突すれば人類の滅亡は確実。レックス・ルーサー大統領は核ミサイルによる破壊を試みるも失敗に終わります。

そして、未来から来たスーパーマンの攻撃をなんとか退けたスーパーマンとバットマンには、さらなる危機が待っています。レックス・ルーサーは、クリプトナイトの隕石はスーパーマンに引きつけられているのだと断言し、スーパーマンをとらえるべく、多くのヒーローやヴィランが派遣されます。この危機をスーパーマンとバットマンはどう切り抜けるのか? ワールズ・ファイネストの実力が試されます。

ライターはジェフ・ローブ!

世界最強のコンビを窮地に陥れるべく次から次へと危機が訪れ、それを二人が抜群のコンビネーションで切り抜ける展開を描いたのは、ライターのジェフ・ローブ。スーパーマンとバットマンの会話の妙と、予想を超えた展開に繋げる手腕は、『バットマン:ロング・ハロウィーン』でも見せたストーリー・テリングの上手さを、異なる形で提示しています。ふんだんなアクション描写に加え、先の読めない展開もあり、読者を物語に引き込んでくれます。

登場キャラクターの多さも本書の見所で、バットマンファミリー&スーパーマンファミリー、主要DCヒーローにも見せ場が用意されていて、物語を盛り上げます。そして物語の後半には舞台が日本に移り、度肝を抜く驚きの展開も用意されているので、実際に本書を読んで楽しんでもらえればと思います。

スーパーマンとバットマンのチームアップが好きな方であれば、「これが観たかった!」と言える展開を見せる『スーパーマン/バットマン:パブリック・エネミー』。映画と共に本作を楽しんでもらえればと思います。

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ドクター・ストレンジ:ウェイ・オブ・ウィアード

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