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2016.09.21

DC・コミックス

いろんなハーレイが楽しめる1冊!
『バットマン:ハーレイ・クイン』

映画公開!ハーレイ・クイン人気爆発!

9月10日に、日本でもついにDCユニバースの実写映画化プロジェクト「DCフィルムズ」の第3弾『スーサイド・スクワッド』が公開されました。

知名度が高いとは言えないヴィランを集めたチームものの映画化ということで、当初は作品のヒットを不安視するファンも少なくなかったのですが、蓋を開けてみれば、米国では8月公開映画のオープニング興行収入歴代1位を記録し、全世界でも大ヒット、今後も展開するDCフィルムズにとって幸先のいいスタートとなりました。

この『スーサイド・スクワッド』がヒットした最大の要因を挙げるとすれば、実質的な主役と言っても過言ではないマーゴット・ロビーが演じるハーレイ・クインの魅力と存在感にあると言えるでしょう。

スーパーマンなどの特殊能力を持つ「メタヒューマン」が政府に対して敵対した場合に備え、政府の手足となってメタヒューマンを相手とした危険なミッションにあたる「特殊部隊」の創設が提案されます。そこで収監されている特殊能力を持つヴィランを集め、それを取りまとめる軍関係者との共同チーム、通称、スーサイド・スクワッド(自殺部隊)が組織されることになります。

映画の中でのハーレイ・クインは、ジョーカーと共に暴れ回っている最中にバットマンに捕らえられて収監。その後、スーサイド・スクワッドのメンバーに選出されることになります。ハーレイ・クインを含めて、スーサイド・スクワッドは10人のメンバーで構成されますが、他のメンバーはそれぞれが違った葛藤や問題を抱えています。

一方、ジョーカーという「絶対悪」に触れた結果、自己開放するという形でヴィランとなったハーレイ・クインは、無邪気で純粋な「悪」としての人生を謳歌しており、だからこそチームのムードメーカーとして機能しつつ、「悪として生きる真理」を体現していくことになります。

そして、自らの心情に素直に生きる彼女の言動が、チームのメンバーにも大きな影響を与えていき、それが物語を引っ張っていくことになります。精神面でのチームの要として、ハーレイ・クインは間違いなく『スーサイド・スクワッド』における主人公のように描かれています。

セクシーでスタイリッシュなファッション、自分に正直にいるという生き様、「悪いけど可愛らしい」言動。これらがマッチした結果、ハーレイ・クインは男女を問わず大きく支持されることになったわけです。原作コミックスで活躍している頃から、その人気のポテンシャルは高いと思われていましたが、実写化にあたってマーゴット・ロビーが演じたことによって、キャラクターの魅力が一般に認知されるレベルで大きく開花し、それが映画のヒットにもつながりました。

全10編のハーレイの物語を収録!

映画でハーレイ・クインの魅力にやられた人なら、やはり原作コミックスでの彼女の活躍が読みたくなるはずです。そこでオススメとなるのが、今回ご紹介する『バットマン:ハーレイ・クイン』です。

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ハーレイ・クインはもともと1992年に放送されていたアニメ版『バットマン』でデビューを飾ったキャラクターで、当初はその初登場回のみに登場するだけの予定でした。しかし、そのキャラクターの完成度の高さからアニメシリーズ内で準レギュラー化。のちにアニメシリーズのコミカライズという形で、コミックス誌面に登場し、着実に人気を獲得していきます。そして、アニメ登場から7年を経て、アニメシリーズのキャラクターが、本家DCユニバースに逆輸入されるというこれまでにない形で、彼女は活躍するようになります。

本誌では、ハーレイがDCユニバースのデビュー作をはじめ、さまざまな角度からハーレイの魅力に迫る中編&短編、全10編が掲載されています。以下から主なエピソードを簡単に紹介していきます。

『バットマン:ハーレイ・クイン』#1
これが彼女のDCユニバースデビュー作。彼女がこれまでにどのような経緯でジョーカーと出会い、ヴィランになったのかが語られます。ハーレイの性格や人間性が丁寧に描かれており、まさにハーレイを知るための基本エピソードと言える内容になっています。

ちなみに本作は、ゴッサムシティが大地震によって壊滅し、その大混乱に乗じてスーパーヴィランたちが街の覇権を巡って争っている状況――つまり、ゴッサムシティの秩序を取り戻すべく奔走するバットマンの活躍を描いた大型クロスオーバー「ノーマンズ・ランド」と同時期に起きています。

『バットマン:ゴッサムナイツ』#14
アニメ版『バットマン』登場時のキャラクターデザイン版のハーレイが登場。アーカム・アサイラムに収監された彼女の、ポイズン・アイビーとのやりとりが描かれる。

『ディテクティブコミックス』v1 #831
スカーフェイスの陰謀によって悪事に荷担させられるも、バットマンと一時的に共闘するハーレイ。

『ディテクティブコミックス』v1 #837
更正して私立探偵として活躍していたリドラーと協力し、アマゾン族を巻き込んだ事件の解決に挑む。

『ジョーカーズ・アサイラム:ハーレイ・クイン』#1
バレンタイン・デーに愛しのジョーカーに会うため、アーカム・アサイラムを脱走したハーレイ。しかしジョーカーの元にたどり着いた彼女を待っていたのは…。

『バットマン:ブラック&ホワイト』#3
変質者の元から逃げのびてきた少女。助けを求められたハーレイとポイズン・アイビーは…。

『レジェンズ・オブ・ダークナイト 100ページ・スーパースペクタキュラー』#1
ジョーカーの計画遂行の時間稼ぎのため、ハーレイはバットマンの足止めを試みる。彼女は元精神科医らしくバットマンの精神分析を行うが…。

『ディテクティブコミックス』v2 #23.2
スーサイド・スクワッドへ参加後、自由の身となったハーレイが改めて自分の人生を振り返る。

決して極悪人ではなく、その時の気分によっては人助けをしたり、犯罪解決に協力したりと、一般的なヴィランの枠組みに収まらないハーレイ・クイン。そのキャラクターの魅力をこのエピソード群で存分に触れることができます。原作で描かれる彼女の魅力に触れれば、映画『スーサイド・スクワッド』でのハーレイの印象もまた変わってくるはずです。

ちなみに、映画のヒットを受けて、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインの単独映画化も決定。今後もまだまだ続く彼女の悪カワな活躍にも期待しちゃいましょう。

文・石井誠(ライター)

2016.09. 9

DC・コミックス

シリーズ第2弾!スーパーガールついに復活!
『スーパーマン/バットマン:スーパーガール』

現在、テレビドラマシリーズ『スーパーガール』がアメコミファンから大きな注目を集めています。日本では海外ドラマ専門チャンネルAXNにて放送され、9月14日にはブルーレイ&DVDが発売されるので、この話題作をこれから観ようという方も多いでしょう。

テレビドラマ版『スーパーガール』は、いとこであるスーパーマンと共に地球へと飛来し、その出生の秘密を隠しながら生活してきたカーラ・ゾー=エルの「スーパーヒロイン/一般人」としての二重生活と、彼女のサクセスストーリーが描かれています。彼女は、普段はナショナルシティのメディア女王と言われるキャット・グランドのもとでアシスタントとして働きつつも、ひとたび事件がおこればスーパーガールとして大活躍します。TVドラマ『glee/グリー』や映画『セッション』での演技が注目された、若手女優メリッサ・ブノワがスーパーガールを演じ、そのキュートな雰囲気がファンを魅了。さらにストーリーは他のDCのドラマシリーズとクロスオーバーがあり、作品としても高い評価を得ています。シーズン2ではついにスーパーマンが登場することも発表され、その展開から目が離せない作品だと言えるでしょう。

「クライシス」で戦死したスーパーガールの復活

TVドラマ化で注目を浴びるスーパーガール。今回は、その彼女が活躍するアメコミ、スーパーマンとバットマン初のチームアップ誌としてスタートした『スーパーマン/バットマン:パブリック・エネミー』(紹介記事はこちら)に続くシリーズ第2弾となる『スーパーマン/バットマン:スーパーガール』をご紹介します。

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スーパーガールは、現在のドラマ版以前にも1984年に映画化されている上、”女性版スーパーマン”というわかりやすいイメージを持っているため、日本でも比較的、知名度の高いキャラクターです。しかし、その知名度の高さに反して、彼女のDCユニバースにおける設定はかなり複雑です。

スーパーガールと言えば、「スーパーマンのいとこ」という設定が定説ですが、実はその設定自体は、長い間封印されていたのです。

1985年のクロスオーバー大作『クライシス・オン・インフィニット・アース』(紹介記事はこちら)にて、スーパーガールは読者に鮮烈な印象を残す戦死を遂げています。この戦死のインパクトが強かったためか、アメコミキャラクターによくある「死からの復活」が、スーパーガールにはすぐに採られませんでした。

1988年、スーパーガールは復活したかに見えたものの、それは異次元世界から来た人造人間でした。その後、その人造人間が人間の少女と合体したり、クラークとロイスの娘で自分は未来からやってきたと主張するキャラクターとして登場するなど、それまでのオリジナルである「スーパーマンのいとこ」という形はとられませんでした。

そうした紆余曲折を経て、ようやくファンが待ち望む「オリジナル設定」でのスーパーガール復活が描かれることになります。それが、2004年に発売された本作『スーパーマン/バットマン:スーパーガール』だったのです。

マイケル・ターナーの美しいアートにも注目!

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物語は、前作『スーパーマン/バットマン:パブリック・エネミー』の直後からスタートします。

地球を消滅させるほどの大きさを持つクリプトナイト隕石の脅威は、前作でのスーパーマンとバットマンの活躍によって回避されたものの、地球には大量のクリプトナイトが落下しました。バットマンがその破片を分析すべく、海底で収集していると、そこで乗物と思われる物体を発見します。それを調べるバットマンを尻目に、乗物に乗っていたと思われる人物は、バットマンの乗ってきたバットボートを奪い,ゴッサムシティへと上陸します。

ゴッサムシティに降り立ったのは、一糸まとわぬ少女でした。彼女を追ったバットマンは、その人並外れたパワーを目の当たりにし、その力の由来はスーパーマンと同じではないかと考え、クリプトナイトを使って彼女を保護します。その後、保護された彼女の前にスーパーマンが現れ、彼女がいとこであるカーラ・ゾー=エルであることがわかるのでした。

同胞との出会いに喜ぶスーパーマンですが、その一方で突如地球に現れたカーラ・ゾー=エルの存在は注目を集めることになります。そして、ある強大な力を持つヴィランまでもが動き始めるのでした。

「スーパーマンのいとこ」というオリジナル設定で復活を遂げるスーパーガールは、最初から「完全復活」ではなく、「能力がまだ覚醒していない」「ほかのヒーローと理解を深める」という部分が描かれ、さらにはほかの有名キャラクターが多数絡むことで、物語は思わぬ方向へと進んでいき、ファン待望のスーパーガール復活劇は大いに盛り上がっていきます。

ただし、本作はあくまで、スーパーマンとバットマンの2人が主人公なので、カーラをそれぞれがどう考えていて、その考えの違いによって起きる対立が、それぞれのモノローグで語られていきます。

本作ではメインキャラのカーラ以外に、ワンダーウーマンやアマゾネスなどの女性キャラクターが多数登場します。そのためか作品も華やかで、彼女達が活躍するアートも大きな見所となっています。アートを担当したのは、女性キャラクターを魅力的に描くことで大きな注目を集めていたマイケル・ターナー。彼は、イメージコミックス内のスタジオ、トップ・カウ・プロダクションに所属し『ウィッチブレード』を世に送り出したことでも有名です。彼の描く女性キャラクターは、その後のアメコミでの女性描写に多大な影響を与えたと言われています。マイケル・ターナーは、2008年に若くして他界してしまいましたが、本書では彼の描くスーパーガールやワンダーウーマンの魅力を存分に味わうことができるので、それだけでも、本書を読む価値はあるでしょう。

先の読めない怒濤の展開と、美しいアートの織りなす本作は、ドラマ版『スーパーガール』に魅了されたファンへの「スーパーガール入門編』としてもうってつけです。

文・石井誠(ライター)

2016.08.31

マーベル・コミックス

『スパイダーバース』サイドストーリー集!
『ワールド・オブ・スパイダーバース』

マルチバースのスパイダーマンたちが協力してインヘリターズと戦った『スパイダーバース』紹介記事)。前日譚『エッジ・オブ・スパイダーバース』紹介記事)に続き、今回はシリーズの最後を締めくくるサイドストーリー集『ワールド・オブ・スパイダーバース』を紹介します。

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『エッジ・オブ・スパイダーバース』のボリュームが本編『スパイダーバース』の1.5倍くらいだったのに対し本作はなんと2倍以上!バラエティに富んだ物語が一挙に収録されています。

バラエティ豊かすぎる作品の数々!

本作は、『スパイダーバース』本編でアース-616のピーター・パーカーが事件に巻き込まれてから後の話が主に描かれており、大きく4つの物語で構成されています。

1:スパイダーバース/スパイダーバース・チームアップ
『スパイダーバース』と『エッジ・オブ・スパイダーバース』で描かれなかった、マルチバースのスパイダーマンたちの物語です。『エッジ~』でも描かれなかったキャラクターが多数登場します。新聞漫画版スパイダーマンや、あのカプコンの格闘ゲーム版スパイダーマンが登場する数ページの掌編から、レディ・スパイダー、スパイダーパンクの短編、スパイダーハムとオールドマン・スパイダーがベン・ライリーを勧誘しに行くチームアップものなど、様々なサイドストーリーが楽しめます。

2:スカーレット・スパイダーズ
『スパイダーバース』本編で、インヘリターズがクローン技術によって、いくら倒しても復活できることを知った、3人のスパイダーマンのクローン(ベン・ライリー、スカーレット・スパイダー、ブラックウィドウ)の戦いを描く物語。
彼らはインヘリターズのクローン製造の拠点に潜入しますが、そこはアイアンマンやヒューマントーチがインヘリターズの手下となっている世界でした。目的達成のためなら非情な行動も辞さないスカーレット・スパイダーとブラックウィドウ、そして実直にヒーロー的な行動を取り続けるベン・ライリーの3人は、施設中枢に辿り着きます。そこには、インヘリターズのクローン化を担うジェニスが待ち受けていました。スパイダー大戦の行く末の鍵を握る、3人の戦いの詳細がここで語られます。

3:スパイダーマン2099
スパイダーマン2099、レディ・スパイダー、シックス・アームド・スパイダーマンの物語。スーペリア・スパイダーマンが殺害したインヘリターズの長男デイモスの遺体を分析するためには未来のテクノロジーが必要だと判断した3人は、2099年へと旅立ちますが、クローンで復活したデイモスは3人を追って未来の世界に到達します。デイモスの猛追によって未来世界を後にすることになった彼らは、安全地帯となっていたアース-13に戻りますが、スパイダーアーミーはインヘリターズによる襲撃で壊滅的な被害を受けていたのでした。しかし、、そこで破壊されたレオパルドンを発見し、一縷の望みをかけて、彼らは未来の技術によってレオパルドンの修理を試みます。

4:スパイダーウーマン
スパイダーウーマンとシルクの活躍が描かれます。自分が、インヘリターズが「ブライド」と呼ぶ存在であることを知ったシルクは、彼らを誘き出すために別の次元に移動。それを追ったスパイダーウーマンとスパイダーマン・ノワールですが、インヘリターズのブリックスとボーラに見つかり、スパイダーマン・ノワールは重傷を負い、スパイダーウーマンとシルクはノワールを助けるべく彼の元いた世界へと移動します。その後、スパイダーウーマンは敵の本拠地であるルームワールドで諜報活動をするようピーターから依頼され、彼女は単身ルームワールドに向かいます。一方、シルクは独断で単独行動を開始、核戦争で崩壊したアース-3145へと辿りつきます。このストーリーでは、戦いの趨勢に大きく関わりを持つスパイダーウーマンとシルクという二人の女性キャラクターの活躍が語られていきます。そして、最後にはスパイダーウーマンの視点から描かれる、『スパイダーバース』の後日談も収録されているので、本シリーズの真のラストシーンを知ることができます。

本シリーズをより深く楽しむには、『エッジ・オブ・スパイダーバース』と『ワールド・オブ・スパイダーバース』を読んだ後、再度『スパイダーバース』本編を読むことをオススメします。別働隊の動きを頭に入れた上で本編を読み返せば、物語を俯瞰でき、より理解も深まるはずです。

『スパイダーバース』は、「さまざまな次元のスパイダーマンが一同に集結!」というキャッチーな掴みと、この作品からアメコミに触れる人にとってもハードルは決して高くない物語となっています。しかし読み込んでみると、そこにはアメコミ特有の奥深い世界観が描かれていて、それを深堀していく楽しみも用意されているのです。

文・石井誠(ライター)

2016.08.24

なぜ彼は登録法反対派に付いたのか?
『ブラックパンサー:シビル・ウォー』

映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で、マーベル・シネマティックユニバースにデビューを飾り、強い印象を残した黒人ヒーロー・ブラックパンサー。映画では、父親を殺された怒りと復讐心から、アイアンマン率いるスーパーヒーローを政府が管理するソコヴィア協定の賛成派として参戦し、劇中のテーマを牽引する大きな役割を担っていました。

そんなブラックパンサーですが、原作である『シビル・ウォー』においてはどんな立場で、どんな行動をしていたのか? それが語られるのが、今回紹介する『ブラックパンサー:シビル・ウォー』です。

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ブラックパンサーは内戦にいかに対応したのか?

ブラックパンサーは、マーベルユニバースにおいてはメジャーなキャラクターの一人ですが、最近まで個人誌が邦訳されていなかったため、その詳細は語られることはほとんどありませんでした。ですので、ストーリー紹介の前に、簡単なプロフィールから紹介していこうと思います。

ブラックパンサーの本名はティチャラ。アフリカ東部にある絶対王政を敷く小国ワガンダの国王です。ブラックパンサーという名前は、ワガンダの王に与えられる尊称で、王族の中で代々受け継がれてきたもの。ブラックパンサーの名を継いだ者は、国を守るという使命が与えられます。またワガンダは、キャプテン・アメリカの盾に使われている稀少金属・ヴィブラニウムの産出国にして、世界屈指の科学技術を持つ国でもあります。

ブラックパンサーはアメリカで活動するスーパーヒーローたちの活躍を耳にし、彼らがワガンダの脅威になりえるかどうかを調べるために渡米。そこで数々のヒーローと交流を深めることで、後にアベンジャーズのメンバーとして参加するまでになります。そして、幼馴染でもあるX-MENのストームとも結婚。しかし、その直後に『シビル・ウォー』が発生したのです。

『シビル・ウォー』における超人登録法は「アメリカ国内のヒーロー」が対象になっています。そのため、アメリカ本国では国賓として扱われるワガンダの国王のブラックパンサーにとって、登録するか否かは問題ではありませんが、登録法が世界に与える影響に対処しなければならない立場に置かれます。さらに、妻のストームはアメリカ国籍を持つヒーローであるため、登録が免除されておらず、本書ではそうした複雑な立場のブラックパンサーだからこその『シビル・ウォー』への関わり方が描かれていきます。

物語は、ブラックパンサーが外交をする様が描かれます。彼は、Dr.ドゥームが支配する専制君主国家ラトベリア、インヒューマンズが住まう月面都市アティラン、サブマリナーことネイモアが統治する海底都市アトランティスを訪問します。彼らに超人登録法への意見を求めるものの、考え方の相違によって、行った先々でトラブルに巻き込まれてしまいます。そして、各地を訪れた結果、ヒーローが登録されれば、彼ら自身がアメリカの兵器となり、国外の陣営にとって脅威になるであろう事をブラックパンサーは予期します。

かつての友人たちが、アメリカの兵器として使用されないために、ブラックパンサーは、アメリカで大統領との会見に臨みます。そのためホワイトハウスは超人登録法に反対する民衆が集まり、警官と民衆の間で衝突が起きます。その衝突に巻き込まれた子供を救おうとブラックパンサーが動いたことで、事態は大きなものへと発展してしまいます。

この一件から超人登録法の危うさをより強く感じたブラックパンサーは、反対派のヒーローたちとの接触を試みます。そして事態は大きく動いていきます。

「国外」から見た内戦を描く

これまでの『シビル・ウォー・クロスオーバー・シリーズ』では、「賛成派」か「反対派」のどちらかの視点からの物語がほとんどでした。しかし、『ブラックパンサー:シビル・ウォー』は、賛成と反対のどちらでもない、そしてX-MENのような「中立」でもない、<外側の視点>から語られているところが、その特徴だと言えるでしょう。

ひとつの法律が、国家だけでなくその世界全体を震撼させる。そしてそれを各キャラクターの視点から、社会や政治といった視点で多角的に語る――コミックの世界の話ながら、まるで現実の世界のようなやり取りが繰り広げられるところに、『シビル・ウォー』というシリーズの奥深さを感じさせられます。

一方、ブラックパンサーとストーム夫婦の描写にも注目してもらいたいと思います。彼らを「仲良し夫婦」ではなく、互いに意見し合う大人の関係として描いている点はとても新鮮です。

ブラックパンサーという外交官の視点で描かれる物語は、シビル・ウォーはアメリカ国内の賛成派と反対派だけで成り立っているのではなく、アメリカ国外の勢力を巻き込んだものであるという、俯瞰した視点が取り入れられています。そうした視点からも『ブラックパンサー:シビル・ウォー』は、シリーズを補完する上ではぜひ押さえておきたいタイトルだと言えるでしょう。

2016.08.10

マーベル・コミックス

マーベルNOW!の中心的シリーズ、ついに刊行開始!
『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』

2013年にマーベル・コミックスが展開したリニューアルキャンペーン「マーベルNOW!」。今回は、『アンキャニィ・アベンジャーズ』『アンキャニィX-MEN』に続く、「マーベルNOW!」における最重要シリーズである『アベンジャーズ』の第1作、

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マーベルNOW!」では、『AVX:アベンジャーズ vs X-MEN』以降の状況を踏まえ、ミュータントと人類の共存の象徴として結成されたアンキャニィ・アベンジャーズが前面で活躍していますが、一方でヒーロー・コミュニティの中心的な存在として、アベンジャーズも存在し続けています。

そのメンバー構成は、キャプテン・アメリカ、アイアンマン、ソー、ブラックウィドウ、ホークアイ、ハルクの6人。マーベル・シネマティックユニバースにおける『アベンジャーズ』の初期メンバーと同じです。映画からコミックに興味を持った新たなファンに訴求すると同時に、アベンジャーズに正規メンバーには長らくなっていなかったハルクを加入させることで、これまでのコミックスファンにもアピールしていると言えます。

アベンジャーズのメンバーのコスチュームデザインも一新されています。キャプテン・アメリカは現代的な戦闘服へ、アイアンマンは新技術を採用したブラックとゴールドのカラーリングになったのをはじめ、見た目がアップデートされています。

最強メンバーがいきなり全滅!

本作の主眼となっているのは、「アベンジャーズの発展的増強」です。

アベンジャーズを率いるキャプテン・アメリカとアイアンマンは、今後地球に迫るであろう「拡大的な脅威」に対して、アベンジャーズを増強すべきだと考えていました。そのためにリストアップしたヒーローたちとの加入交渉が進む中、危惧していた「拡大的な脅威」が迫ってきます。

それは、火星に住まう神に近い存在、エクス・ニヒロ率いるビルダーズ一派によるものでした。彼らは、遺伝子情報を書き換え、地球の環境を再構成するための「創世爆弾(オリジンボム)」を地球に落とし、地球を自分たちに合った世界に作り替えようとしていたのです。世界の主要都市に落ちた「創世爆弾」から生まれた怪物が人類に襲い掛かります。そして、その攻撃を阻止すべく、アベンジャーズのメンバー6人が火星へと向かいます。

まさに<ベストメンバー>とも言える6人のアベンジャーが火星の降り立ち、エクス・ニヒロたちと対峙しますが、その神に近い力に圧倒されます。敵に操られたハルクによってソーが倒され、アイアンマン、ホークアイ、ブラックウィドウも捕らえられてしまいます。リーダーであるキャプテン・アメリカも倒されますが、彼はメッセンジャーとして地球に送り返されます。

物語の冒頭でいきなり<ベストメンバー>が完敗を喫してしまうのです。大きな危機を目の前に、唯一地球に戻ったキャプテン・アメリカは、増強を進めていたアベンジャーズの新たなメンバーを招集。12人のアベンジャーと共に、仲間を救い地球を守るべく、再び火星へと向かいます。

本シリーズの導入部とも言うべきこのビルダーズとの戦いの次は、新メンバーのハイペリオン、スマッシャー、キャプテン・ユニバースの3人にスポットを当てた物語が展開します。新メンバー12人のうち、スパイダーマンやウルヴァリン、キャプテンマーベルなどの8人は過去に他の作品で活躍してきたヒーローですが、この3人は本作がデビューとなります。

しかし、単なるシリーズの導入編に終わっていないのが、本書『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』のポイントとも言えます。

本書で最も強烈な印象を残すのが、エクス・ニヒロの率いるビルダーズです。わずか数人でアベンジャーズの主力メンバーを押さえ込んでしまうほどの強敵で、今後のシリーズで登場するであろうさらなる強大な敵の存在が、シリーズ開始から示唆されているとも言えます。

本シリーズのライターは、本書と非常に結びつきが強い「マーベルNOW!」のニューアベンジャーズ・シリーズ(10月末にシリーズ第1作『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』が刊行予定)、そしてその先に待つクロスオーバー『インフィニティ』(来年刊行予定)を手がけるジョナサン・ヒックマン。アーティストは、ジェローム・オプーナとアダム・キューバート。ジェローム・オプーナが担当する本書前半のアートは、絵画的な描写が、ジョナサン・ヒックマンの描く壮大な叙事詩の始まりを感じさせるストーリーと相まって、荘厳な雰囲気を醸し出していて、「今までのアベンジャーズとは何かが違う!」と思わせてくれます。

本書を読めば、新しいマーベルユニバースの潮流に乗ることができますので、これまでのアメコミファンの方はもちろんのこと、これまでシリーズ作品を追いかけたことがない方にもオススメできる1冊となっています。

文・石井誠(ライター)

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