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2016.08.24

なぜ彼は登録法反対派に付いたのか?
『ブラックパンサー:シビル・ウォー』

映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で、マーベル・シネマティックユニバースにデビューを飾り、強い印象を残した黒人ヒーロー・ブラックパンサー。映画では、父親を殺された怒りと復讐心から、アイアンマン率いるスーパーヒーローを政府が管理するソコヴィア協定の賛成派として参戦し、劇中のテーマを牽引する大きな役割を担っていました。

そんなブラックパンサーですが、原作である『シビル・ウォー』においてはどんな立場で、どんな行動をしていたのか? それが語られるのが、今回紹介する『ブラックパンサー:シビル・ウォー』です。

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ブラックパンサーは内戦にいかに対応したのか?

ブラックパンサーは、マーベルユニバースにおいてはメジャーなキャラクターの一人ですが、最近まで個人誌が邦訳されていなかったため、その詳細は語られることはほとんどありませんでした。ですので、ストーリー紹介の前に、簡単なプロフィールから紹介していこうと思います。

ブラックパンサーの本名はティチャラ。アフリカ東部にある絶対王政を敷く小国ワガンダの国王です。ブラックパンサーという名前は、ワガンダの王に与えられる尊称で、王族の中で代々受け継がれてきたもの。ブラックパンサーの名を継いだ者は、国を守るという使命が与えられます。またワガンダは、キャプテン・アメリカの盾に使われている稀少金属・ヴィブラニウムの産出国にして、世界屈指の科学技術を持つ国でもあります。

ブラックパンサーはアメリカで活動するスーパーヒーローたちの活躍を耳にし、彼らがワガンダの脅威になりえるかどうかを調べるために渡米。そこで数々のヒーローと交流を深めることで、後にアベンジャーズのメンバーとして参加するまでになります。そして、幼馴染でもあるX-MENのストームとも結婚。しかし、その直後に『シビル・ウォー』が発生したのです。

『シビル・ウォー』における超人登録法は「アメリカ国内のヒーロー」が対象になっています。そのため、アメリカ本国では国賓として扱われるワガンダの国王のブラックパンサーにとって、登録するか否かは問題ではありませんが、登録法が世界に与える影響に対処しなければならない立場に置かれます。さらに、妻のストームはアメリカ国籍を持つヒーローであるため、登録が免除されておらず、本書ではそうした複雑な立場のブラックパンサーだからこその『シビル・ウォー』への関わり方が描かれていきます。

物語は、ブラックパンサーが外交をする様が描かれます。彼は、Dr.ドゥームが支配する専制君主国家ラトベリア、インヒューマンズが住まう月面都市アティラン、サブマリナーことネイモアが統治する海底都市アトランティスを訪問します。彼らに超人登録法への意見を求めるものの、考え方の相違によって、行った先々でトラブルに巻き込まれてしまいます。そして、各地を訪れた結果、ヒーローが登録されれば、彼ら自身がアメリカの兵器となり、国外の陣営にとって脅威になるであろう事をブラックパンサーは予期します。

かつての友人たちが、アメリカの兵器として使用されないために、ブラックパンサーは、アメリカで大統領との会見に臨みます。そのためホワイトハウスは超人登録法に反対する民衆が集まり、警官と民衆の間で衝突が起きます。その衝突に巻き込まれた子供を救おうとブラックパンサーが動いたことで、事態は大きなものへと発展してしまいます。

この一件から超人登録法の危うさをより強く感じたブラックパンサーは、反対派のヒーローたちとの接触を試みます。そして事態は大きく動いていきます。

「国外」から見た内戦を描く

これまでの『シビル・ウォー・クロスオーバー・シリーズ』では、「賛成派」か「反対派」のどちらかの視点からの物語がほとんどでした。しかし、『ブラックパンサー:シビル・ウォー』は、賛成と反対のどちらでもない、そしてX-MENのような「中立」でもない、<外側の視点>から語られているところが、その特徴だと言えるでしょう。

ひとつの法律が、国家だけでなくその世界全体を震撼させる。そしてそれを各キャラクターの視点から、社会や政治といった視点で多角的に語る――コミックの世界の話ながら、まるで現実の世界のようなやり取りが繰り広げられるところに、『シビル・ウォー』というシリーズの奥深さを感じさせられます。

一方、ブラックパンサーとストーム夫婦の描写にも注目してもらいたいと思います。彼らを「仲良し夫婦」ではなく、互いに意見し合う大人の関係として描いている点はとても新鮮です。

ブラックパンサーという外交官の視点で描かれる物語は、シビル・ウォーはアメリカ国内の賛成派と反対派だけで成り立っているのではなく、アメリカ国外の勢力を巻き込んだものであるという、俯瞰した視点が取り入れられています。そうした視点からも『ブラックパンサー:シビル・ウォー』は、シリーズを補完する上ではぜひ押さえておきたいタイトルだと言えるでしょう。

2016.08.10

マーベル・コミックス

マーベルNOW!の中心的シリーズ、ついに刊行開始!
『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』

2013年にマーベル・コミックスが展開したリニューアルキャンペーン「マーベルNOW!」。今回は、『アンキャニィ・アベンジャーズ』『アンキャニィX-MEN』に続く、「マーベルNOW!」における最重要シリーズである『アベンジャーズ』の第1作、

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マーベルNOW!」では、『AVX:アベンジャーズ vs X-MEN』以降の状況を踏まえ、ミュータントと人類の共存の象徴として結成されたアンキャニィ・アベンジャーズが前面で活躍していますが、一方でヒーロー・コミュニティの中心的な存在として、アベンジャーズも存在し続けています。

そのメンバー構成は、キャプテン・アメリカ、アイアンマン、ソー、ブラックウィドウ、ホークアイ、ハルクの6人。マーベル・シネマティックユニバースにおける『アベンジャーズ』の初期メンバーと同じです。映画からコミックに興味を持った新たなファンに訴求すると同時に、アベンジャーズに正規メンバーには長らくなっていなかったハルクを加入させることで、これまでのコミックスファンにもアピールしていると言えます。

アベンジャーズのメンバーのコスチュームデザインも一新されています。キャプテン・アメリカは現代的な戦闘服へ、アイアンマンは新技術を採用したブラックとゴールドのカラーリングになったのをはじめ、見た目がアップデートされています。

最強メンバーがいきなり全滅!

本作の主眼となっているのは、「アベンジャーズの発展的増強」です。

アベンジャーズを率いるキャプテン・アメリカとアイアンマンは、今後地球に迫るであろう「拡大的な脅威」に対して、アベンジャーズを増強すべきだと考えていました。そのためにリストアップしたヒーローたちとの加入交渉が進む中、危惧していた「拡大的な脅威」が迫ってきます。

それは、火星に住まう神に近い存在、エクス・ニヒロ率いるビルダーズ一派によるものでした。彼らは、遺伝子情報を書き換え、地球の環境を再構成するための「創世爆弾(オリジンボム)」を地球に落とし、地球を自分たちに合った世界に作り替えようとしていたのです。世界の主要都市に落ちた「創世爆弾」から生まれた怪物が人類に襲い掛かります。そして、その攻撃を阻止すべく、アベンジャーズのメンバー6人が火星へと向かいます。

まさに<ベストメンバー>とも言える6人のアベンジャーが火星の降り立ち、エクス・ニヒロたちと対峙しますが、その神に近い力に圧倒されます。敵に操られたハルクによってソーが倒され、アイアンマン、ホークアイ、ブラックウィドウも捕らえられてしまいます。リーダーであるキャプテン・アメリカも倒されますが、彼はメッセンジャーとして地球に送り返されます。

物語の冒頭でいきなり<ベストメンバー>が完敗を喫してしまうのです。大きな危機を目の前に、唯一地球に戻ったキャプテン・アメリカは、増強を進めていたアベンジャーズの新たなメンバーを招集。12人のアベンジャーと共に、仲間を救い地球を守るべく、再び火星へと向かいます。

本シリーズの導入部とも言うべきこのビルダーズとの戦いの次は、新メンバーのハイペリオン、スマッシャー、キャプテン・ユニバースの3人にスポットを当てた物語が展開します。新メンバー12人のうち、スパイダーマンやウルヴァリン、キャプテンマーベルなどの8人は過去に他の作品で活躍してきたヒーローですが、この3人は本作がデビューとなります。

しかし、単なるシリーズの導入編に終わっていないのが、本書『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』のポイントとも言えます。

本書で最も強烈な印象を残すのが、エクス・ニヒロの率いるビルダーズです。わずか数人でアベンジャーズの主力メンバーを押さえ込んでしまうほどの強敵で、今後のシリーズで登場するであろうさらなる強大な敵の存在が、シリーズ開始から示唆されているとも言えます。

本シリーズのライターは、本書と非常に結びつきが強い「マーベルNOW!」のニューアベンジャーズ・シリーズ(10月末にシリーズ第1作『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』が刊行予定)、そしてその先に待つクロスオーバー『インフィニティ』(来年刊行予定)を手がけるジョナサン・ヒックマン。アーティストは、ジェローム・オプーナとアダム・キューバート。ジェローム・オプーナが担当する本書前半のアートは、絵画的な描写が、ジョナサン・ヒックマンの描く壮大な叙事詩の始まりを感じさせるストーリーと相まって、荘厳な雰囲気を醸し出していて、「今までのアベンジャーズとは何かが違う!」と思わせてくれます。

本書を読めば、新しいマーベルユニバースの潮流に乗ることができますので、これまでのアメコミファンの方はもちろんのこと、これまでシリーズ作品を追いかけたことがない方にもオススメできる1冊となっています。

文・石井誠(ライター)

2016.08. 1

マーベル・コミックス

『スパイダーバース』をもっと楽しむための前日譚エピソード集
『エッジ・オブ・スパイダーバース』

ヴィレッジブックスのアメコミシリーズ史上で最大級のヒット作となった、時空を超えたスパイダー大戦を描いた『スパイダーバース』。今回は、その前日譚を描く『エッジ・オブ・スパイダーバース』を紹介します。

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アメコミの大型クロスオーバー作品では、物語の主軸を描いた本編の他に、「タイイン」と呼ばれるサブストーリーも描かれます。そこでは「どうして本編の事件が起こったのか?」という前日譚が取り上げられることが多いです。

『スパイダーバース』の本編では、主人公であるアース616のピーター・パーカーがスパイダー大戦に巻き込まれるところから始まるので、前日譚は重要な意味を持つことになります。

それぞれのスパイダーマンたちが、各ユニバースにおいて、どんな状況でインヘリターズの襲撃に遭い、この戦いに参加することになったのか――それを紐解くことによって、『スパイダーバース』の壮大さが理解できるわけです。

『エッジ・オブ・スパイダーバース』は、いくつもの並行世界を舞台にした短編作品のオムニバス集となっています。今回はストーリーの重要度が高いものをチョイスして紹介します。

本書の6つの物語を紐解くと、『スパイダーバース』では明かされていなかった、6つの疑問について描かれていることがわかります。それぞれのストーリーを紹介していきましょう。

本編で描かれなかった6つの疑問

①スーペリア・スパイダーマンによる軍団結成
本書で最も多くのページが割かれているのが、メインストーリーでも重要な役割を担ったドクター・オクトパスの精神が宿るスーペリア・スパイダーマンの戦いです。時間エネルギーの爆発によって、2099年の未来に飛ばされてしまったスーペリア・スパイダーマンは、未来の技術を駆使して過去に戻るための装置を完成させます。しかし、その装置を使用して辿り着いたのは、別の並行世界のスパイダーマンたちが殺された世界でした。この奇妙な状況に疑問を抱いたスーペリア・スパイダーマンは、スパイダーマンを狙う者の存在に気付き、それに対抗するためのスパイダーマンによる対抗組織を作り上げるべく、マルチバースを奔走します。スーペリア・スパイダーマンの仲間集めとそれぞれのユニバースのスパイダーマンの戦いがつながり、スパイダー軍団結成の経緯が語られていくことになります。
ここでは、スパイダーマン・ノワール、スパイダーマン・インディア、アサシン・スパイダーマンなど、『スパイダーバース』でも登場したキャラクターの前日譚も語られています。

②カーンの過去
このスーペリア・スパイダーマンの活躍と同時に描かれるのが、異端のインヘリターズであるカーンの過去です。『スパイダーバース』本編で重要な存在であるカーンが、どういった経緯でマスクを身につける事になったのかが描かれます。

③スパイダーグウェン
ピーター・パーカーではなく、グウェン・ステイシーがクモに噛まれて能力を得て、スパイダーウーマンとして戦うという読み切り作品です。ミッドタウン高校に通う女子高生であり、メリージェーン率いるバンド「メリー・ジェーンズ」のドラマーとして活動するグウェンが、夜はスパイダーウーマンとして行動する姿が描かれ、この新キャラを紹介する「パイロット版」的な要素もあります。ちなみに『スパイダーバース』で人気を得たスパイダーグウェンは個人誌を獲得するに至りました。

④スパイダーマン2099
未来のスパイダーマンことスパイダーマン2099のエピソードは、複雑な構成となっています。別ユニバースにいる3人のスパイダーマン2099を描いた物語はマルチバースならではの展開をする一編です。敵味方ともに時空を超えられるという設定を生かした複雑な構成が見所です。

⑤メイディ・パーカー
アース982のピーター・パーカーとメリージェーンの娘、メイディ・パーカー=スパイダーガールの物語。メイディがどんな過酷な状況を乗り越え、幼い弟を抱えてスパイダー軍団と共に行動することになったのかが描かれます。

⑥アース-616のピーター・パーカー
こうした並行世界のスパイダーマンが危機に陥っていた時に、インヘリターズとの戦いに巻き込まれる前のアース-616のピーター・パーカーが、どんな状況にあったのかも描かます。
このときピーターは、スーペリア・スパイダーマンが設立したパーカー・インダストリーズという会社を受け継ぎ、会社の社長として活動していました。新たなパートナーであるシルクとのやり取り、新たなMs.マーベルとしてデビューしたばかりのムスリム系ティーンエイジャーにして、ヒーローオタクという設定のカマラ・カーンとのチームアップなど、『スパイダーバース』とは直接関係のない物語ながら、616のピーターの現状がわかる、『スパイダーバース』から読み始めた読者にとって、導入的役割を果たしているパートだと言えるでしょう。

サブキャラクターを深堀りする短編の数々

この大きな6つの流れの他には、<アーマー型コスチュームを着たアース-31411の「ザ・スパイダーマン」の物語>、<クモに変貌していくパットン・パーネルとそれに巻き込まれるヒロインのサラジェーンの怪奇譚>、<『スパイダーバース』本編で重要な役割を果たす、アース-833のスパイダーUKの前日譚>、<アース-14152の少女ペニ・パーカーが乗り込むパワードスーツ、スパ//ダーの活躍>など、さまざまな物語が収録されています。

本書を読んでから『スパイダーバース』を読み直せば、本編を読んだだけではわからなかったいくつかの疑問が解き明かされ、シリーズ全体の理解を深めることができるはずです。『スパイダーバース』を楽しみ尽くすためにも、読んでおくべき1冊なのは間違いありません。

文・石井誠(ライター)

2016.07.22

マーベル・コミックス

今明かされるマーベル秘史の数々とは?
『ニューアベンジャーズ:イルミナティ』

マーベルユニバースをより深く楽しむためのシリーズ『マーベル・マスト・リード』。2015年5月にスタートした本シリーズも約1年かけて第1期7冊が完結しました。それを締めくくるのが今回紹介する『ニューアベンジャーズ:イルミナティ』です。

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Mr.ファンタスティック、アイアンマン、プロフェッサーX、Dr.ストレンジ、ネイモア、ブラックボルトという、ヒーローコミュニティの名だたる人物が集まり、この世のあらゆる重大事案に対応すべく、内密に組織された秘密結社・イルミナティ。

この組織は、『ニューアベンジャーズ:セントリー』にて初登場しています。この時から、謎の多いセントリーを警戒するなど「ヒーローコミュニティの監視者」的な印象がありました。しかし、『シビル・ウォー』によって超人登録法に対する考え方の違いから組織は分裂し活動は沈静化します。しかし、彼らの存在は『ワールド・ウォー・ハルク』で再びクローズアップされます。

自我を失って暴走したハルクによってラスベガスが壊滅した事実を重く見たイルミナティは、ハルクを深宇宙に放逐することを決定。『ワールド・ウォー・ハルク』は、宇宙に追放されたハルクが、その決定を下したイルミナティに復讐するために地球に帰還し対決する物語が描かれました。本作でイルミナティのメンバーは、ヒーローながらもハルクに敵対するヴィランに近い扱いをされていました。

このようにこれまで何度か作中で描かれながらも、多くの謎を孕んでいたイルミナティ。そのイルミナティのこれまでの動きを5話にわたって追うのが、本書『ニューアベンジャーズ:イルミナティ』です。

大事件の陰にイルミナティあり!

第1話では、1972年に出版された「クリー/スクラル戦争」直後の、イルミナティの結成から物語が始まります。

変身能力を持つスクラル人と彼らの仇敵である列強種族クリー人は、長きにわたる星間戦争を行い、一方で、ともに地球侵略を目論んでいました。クリー出身のヒーロー、キャプテン・マーベルはクリー人の地球侵攻の手伝いをすることを拒否し、アベンジャーズと協力。クリーとスクラルの大規模な戦いに巻き込まれるという「クリー/スクラル戦争」が終わったところから、第1話の物語は始まります。

戦いの直後、結成されたばかりのイルミナティは、スクラル人の皇帝に対し、二度と地球を侵略しないという言質をとるためにその母艦を襲います。母艦の破壊に成功したものの、イルミナティのメンバーはスクラル人に捕らえられてしまいます。

第2話は1991年に出版された大型クロスオーバー『インフィニティ・ガントレット』の後日譚となっています。

『インフィニティ・ガントレット』では、神に近い力を持つタイタン人サノスが、自身の望みをかなえるために超宇宙的なパワーを秘めた6つのインフィニティ・ジェムを収集したことによって起こる宇宙的な危機に、ヒーローが立ち向かう物語が描かれました。本話は、その戦いの直後にインフィニティ・ジェムの扱いをどうするか、イルミナティが話し合い、その超宇宙的なパワーに翻弄される姿が描かれます。

第3話は、1984年に出版されたマーベルの大型クロスオーバー『シークレット・ウォーズ』の後日譚です。

『シークレット・ウォーズ』は、超宇宙的な存在として地球を観測していたビヨンダーが、スーパーヒーローとスーパーヴィランを宇宙に作りだした「バトルワールド」に転送し、彼らを戦わせて人類について学ぶという物語でした。

この戦いを経て、ビヨンダーの脅威は去ったものと思われていましたが、ビヨンダーはまだいると感知したプロフェッサーXはイルミナティを招集。人類に脅威を及ぼしかねないビヨンダーを止めるべく、イルミナティはビヨンダーが宇宙に作った、ヒーローたちが活動する架空のニューヨークに赴きます。

第4話は、クリー帝国出身で、『シークレット・インベージョン』後のマーベルユニバースで活躍することになるキャラクター、マーベル・ボーイにまつわる物語が描かれます。

地球に新しいクリー帝国を築くべく、クリー製のハイテク兵器を駆使して人類に宣戦布告したマーベル・ボーイの素質を見込んだアイアンマンは、イルミナティを招集し、彼にヒーローの自覚を芽生えさせるべく行動を開始します。

第5話は、この後にスタートする大型クロスオーバー『シークレット・インベージョン』の序章です。

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ニューアベンジャーズが忍者軍団を率いるエレクトラを倒すと、その正体がスクラル人であったことがわかります(『ニューアベンジャーズ:レボリューション』)。アイアンマンは、スクラル人による地球侵攻が進んでいることをその事実から悟り、その脅威に対処するために、『シビル・ウォー』、『ワールド・ウォー・ハルク』事件を経て関係性が悪くなっていたイルミナティを再招集します。スクラル人の遺体を分析し、その目的を探ろうとする彼らのもとに、ヒーローの能力をコピーしたスクラル人が襲来、イルミナティと激闘を繰り広げます。

過去の大型イベントを新たな解釈で描き直す

本作はイルミナティという秘密組織の成り立ちと、これまでベールに包まれていた活躍を描いています。

ただしイルミナティは「後付け」の設定のため、『クリー/スクラル戦争』や『シークレット・ウォーズ』の発売当時にはまだ存在していませんでした。普通だったら、設定に大きな矛盾が生じそうな後付け話ですが、本作はマーベルユニバースの歴史的大事件と絡めながらも、大きな齟齬を起こすことなく、その後に始まる『シークレット・インベージョン』に向けて、マーベルユニバースの歴史をおさらいする役目も果たしています。

『クリー/スクラル戦争』『シークレット・ウォーズ』といった有名なクロスオーバー作品は邦訳も出ていないため、あらすじレベルでしか知らない人がほとんどだと思います。本作は、こうした作品をより深く知るのにうってつけですし、さらに昔の作品の単なる焼き直しではなく、イルミナティという存在を通して新たな物語性が付与されているところも特長です。

本書は、改めてマーベルユニバースの歴史を学ぶための、必ず読んでおきたい1冊になっています。

文・石井誠(ライター)

2016.07.14

マーベル・コミックス

エピソード5のあのシーンとの深いつながりも?
『スター・ウォーズ:ナー・シャッダの決斗』

年末公開予定のスピンオフ映画『ローグワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の情報が少しずつ出始めて、また「スター・ウォーズ熱」が高まり始めている中、ファンが待ち望んでいた『スター・ウォーズ:スカイウォーカーの衝撃』の続編である『スター・ウォーズ:ナー・シャッダの決斗』の邦訳版がついに発売されました。

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マーベルコミックスによる28年ぶりの『スター・ウォーズ』のコミック化、そして「正史=カノン」として映画と世界観を共有することで話題となった『スター・ウォーズ:スカイウォーカーの衝撃』(紹介記事はこちら)。映画本編では描かれなかった、ルークとダース・ベイダーの初対決、ボバ・フェットとの一騎打ちというアクションの見せ場だったこの作品、ラストではハン・ソロの妻を名乗る女性の登場したため、その続きが気になっていたファンも多いと思います。

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本作は、そのハン・ソロの妻を名乗るサナ・ソロとの関わりから始まるかと思いきや、ストーリーの縦軸であるルークが辿るオビ=ワン・ケノービにまつわる物語から幕を開けます。

『スカイウォーカーの衝撃』のラストで、ルークがボバ・フェットとの激闘の末に手に入れた「ベン・ケノービの日記」。そこには、ジェダイの生き残りとして、オーウェン夫妻に預けられたルークを見守りながら過去を悔い、ひとりタトゥイーンの砂漠で暮らした日々、そしてある時にルークがみせた行動に喚起されて、世捨て人から再びジェダイ騎士として目覚めるまでのオビ=ワンの思いが書かれていました。

オビ=ワンの思いを知ったルークは、ジェダイ騎士としてさらなる修行を積むための場所の情報を得るべく、荒くれ者が集まり「密輸衛星」と呼ばれているナー・シャッダを訪れます。しかし、状況はルークの思惑通りには行かず、持っていたライトセーバーを奪われてしまいます。ライトセーバーを奪った男を追い、街中を駆け回ったルークは、衛星を牛耳り、ジェダイに関するさまざまなアイテムをコレクションしているクラッカス・ザ・ハットに遭遇。彼に捕らえられ、見世物として地下闘技場で戦うことを強いられてしまいます。

一方、帝国軍の拠点を探すために共に行動していたソロとレイアは、帝国軍に発見されてしまいます。なんとか追っ手を振り切り辺境の惑星に降り立つと、その後を追うように、ハンの妻を名乗るサナが現れました。レイアを捕らえ、帝国に引き渡そうとするサナ。それを説得しようとするハン。混乱する状況の中、帝国軍が彼らに攻撃を開始します。

『スカイウォーカーの衝撃』では、映画本編で描かれなかったダース・ベイダーとの邂逅やボバ・フェットとの戦いといった、敵との関係性が掘り下げられていました。一方、『ナー・シャッダの決斗』では、今後深い絆で結ばれていくことになる、ルーク、ハン、レイア、チューイ、R2-D2、C-3POらの関係性に重きを置くことで、「仲間」への思いを描く物語となっています。

ここには『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』で描かれた氷の惑星・ホスにおけるルークとハンの深い信頼関係や、ハンとレイアの関係に、深い説得力を持たせる試みがされているように思えます。

また、『帝国の逆襲』に向けて、ルークがジェダイ騎士として修行することに執着し、ヨーダのもとに向かう流れも、本作におけるジェダイを巡る戦いの影響を受けていることを感じさせます。このように映画本編とのかかわりを想像しながら本誌を読みこめば、スター・ウォーズの世界観が広がることになるはずです。

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本書は以前紹介した『スター・ウォーズ:ダース・ベイダー』とも非常に近い時間軸にある物語ですので、併せて読むことで、ダース・ベイダーのルークに対する執念がより強固になる流れも理解することができます。

文・石井誠(ライター)

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ワールド・オブ・スパイダーバース

ダン・スロットほか=著

ウンベルト・ラモスほか=絵

秋友克也=翻訳

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