ヴィレッジブックスのアメリカンコミックス情報サイト

2017.02.10

マーベル・コミックス

キャプテン・アメリカとソーに迫る過去の因縁!
マーベル・オリジナル・グラフィックノベル
『アベンジャーズ:エンドレス・ウォータイム』

今回は、『アベンジャーズ:エンドレス・ウォータイム』をご紹介します。本書は、マーベルコミックスが2013年12月に刊行をスタートした『マーベル・オリジナル・グラフィックノベル』シリーズの第1弾にあたる作品です。

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「グラフィックノベル」とは、1978年にウィル・アイズナーが発表したコミック『神との契約』を嚆矢とする、いわゆる「大人向け」コミックを指すジャンル名です。
当時は子供に向けて作られていた「コマが割られてセリフが入る」スタイルでありながら、連載方式はとらないこと、内容も表現も大人の鑑賞を意識して作られていることなどがその特徴と言えるでしょう。
1980年代に入り、アメリカンコミックス業界では、グラフィックノベルが多く出版されるようになりました。その流れに乗るように、1982年にはマーベルコミックスも『マーベルグラフィックノベル』を創刊します。
子供向けのコミックブックと、より大人向けのグラフィックノベルという2枚看板のもとに出版を続けたマーベルコミックスですが、アメコミのファン層が変化するに従い、コミックブック自体が徐々に大人向けの内容へとなっていきました。次第に「子供向け」「大人向け」を区別する必要は薄れていき、1993年に『マーベルグラフィックノベル』は幕を閉じたのでした。
それから20年、マーベルのコミックブックは主に大人に向けた内容で出版され続け、長期連載形式という当初からのスタイルを続けています。
そんな中「単発で大人向けの物語を楽しめる」グラフィックノベルが復活することになりました。それが『マーベル・オリジナル・グラフィックノベル』シリーズなのです。
その第1弾の主人公に選ばれたのは、アベンジャーズ。チームメンバーや設定は、2013年時の「マーベルNOW!」に準じているものの、そうした連載ものとは設定の関連がない、この1冊から読み始めることができる独立したストーリーとなっています。

会議のため、アベンジャーズ・タワーに集まったメンバーたちは、中東の小国スロレニアでの紛争に、アメリカ軍の無人兵器が投入されたことを知ります。
キャプテン・アメリカはそれが第二次世界大戦中に破壊したはずの、ナチスの超兵器ヴァンダーヴァッフェによく似た形状をしていることに気づき、ソーはその無人兵器の「生体」部分が、アスガルドから第二次世界大戦中のミッドガルド(地球)へと逃げ出した邪悪なドラゴンであることに気づきます。現場に向かったアベンジャーズは、その無人生体兵器「アイスハリアー」と交戦。
ナチスの超兵器とアスガルドの邪悪なドラゴンを融合させた強力無比なこの兵器を、一体誰がどのような意図を持って作り上げたのか…という真相に迫ることになります。

ライターは、映画『アイアンマン3』の原案ともなった『アイアンマン:エクストリミス』を手がけたウォーレン・エリス。
過去からやってきたキャップとソーの因縁の敵と、現在アベンジャーズを脅かす陰謀が複雑に絡み合う物語は、要所要所に迫力のあるアクションシーンを加え、コンパクトながらも読み応え満点です。
また「大人向け」を謳うグラフィックノベルらしく、ヒーロー同士の関係性や、各人の思いなど、キャラクターがとても掘り下げられているのも特徴です。コミックブックよりも一歩踏み込んだ描写に唸らされること間違いありません。アイアンマンと他のメンバー間にある距離感を「大人向け」で書くとこうなるのか……など、細かい見どころも詰め込まれています。

連載方式で次々と起こる事件を追っていくのも、アメリカンコミックスを読む醍醐味なのは確かですが、しっかりと練り込まれたこうした「大人の」物語を、1冊完結という形で読むというのは、それとは異なる種類の面白さがあります。
現在邦訳版が刊行されている「マーベルNOW!」とはひと味ちがう、『マーベル・グラフィック・ノベル』が送る大人な味わいを楽しんでみてはいかがでしょうか?

文・石井誠(ライター)

2017.01.30

その他

【本日発売!】アベンジャーズ:ラスト・ホワイト・イベント/ヘルボーイ:地獄の花嫁(1月30日刊行)

今回は本日2017年1月30日発売の新刊『アベンジャーズ:ラスト・ホワイト・イベント』『ヘルボーイ:地獄の花嫁』の2冊をご紹介いたします!

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価格 2,700円+税
ライター ジョナサン・ヒックマン
アーティスト ダスティン・ウィーバー/マイク・デオダート
翻訳 秋友克也


アベンジャーズ新シリーズ第2弾!

『AVX』後のリランチ「マーベルNOW!」で、チームメンバーが再編成され、20人弱の大人数となったアベンジャーズ。『アベンジャーズ:アベンジャーズ・ワールド』に続くシリーズ第2弾がこの『アベンジャーズ:ラスト・ホワイト・イベント』です。

火星を訪れた宇宙の<建設者>ビルダーズの尖兵エクス・ニヒロとその妹アビス。彼らが地球の数カ所に向けて放った「創世爆弾(オリジン・ボム)」によって始まったのは、地球の生命活動の根幹を変化させ、異なるものへと進化させる再創造でした。

その一方、ビルダーズのシステムによって、世界に変革をもたらす“白い事象”が発現。しかし壊れたシステムは、ひとりの冴えない大学生ケビン・コナーに、惑星防衛システム「スターブランド」の力を与えてしまいます。

アベンジャーズは力を暴走させるケビンをなんとか抑え、世界各地で起こる異変に対応しようとしますが……。

本格SFの趣きたっぷりの新シリーズは、この後『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』(既刊)のストーリーとも交錯し、リランチ後のアベンジャーズ誌では初のクロスオーバー『インフィニティ』(本年刊行予定)へとなだれ込み、怒濤の展開を見せていきます。

時系列としては、『アベンジャーズ:ワールド』→『ニューアベンジャーズ:エブリシング・ダイ』→『アベンジャーズ:ラスト・ホワイト・イベント』→『インフィニティ』となっています。

ニューアベンジャーズ誌との併読で、宇宙規模の大スケールをもって描かれるアベンジャーズの大活躍を、目一杯堪能しましょう!


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価格 3,100円+税
ライター マイク・ミニョーラ
アーティスト リチャード・コーベン/スコット・ハンプトン/ケビン・ノーラン/マイク・ミニョーラ
翻訳 今井亮一

ミニョーラの想像力が炸裂する短篇集!

マイク・ミニョーラの看板シリーズ『ヘルボーイ』。これまで各国の神話や民話、オカルト、SFなど多岐にわたるテーマを、ヘルボーイという魅力的なキャラクターを通して描いてきたミニョーラが、彼個人の愛するアーティストたちを集めて作った短篇集が、『ヘルボーイ:地獄の花嫁』です。

全6編中、3編を手がけているのは、アイズナー賞を受賞した『ヘルボーイ:捻じくれた男』でもアーティストを務め、シリーズの準レギュラーとなっているベテラン、リチャード・コーベン。

『ヘルボーイ・イン・メキシコ 酔生夢譚』『邪なる二本立て』、そして表題作『地獄の花嫁』を描いています。

そしてミニョーラ自身が「描くのが怖かったのかもしれない」と語る女吸血鬼の物語『眠れる者と死せる者』を手がけるのは、スコット・ハンプトン。『バットマン:ナイトクライ』や、マジック・ザ・ギャザリングのイラストなどでも知られる実力者です。

今回、ミニョーラ本人が手がけるのは『ウッティア家の遺産』。元はなんと『USAトゥデイ』のウェブコミックとして描かれたものでした。

そしてトリをつとめる最終話『バクスター・オークリー、願いを叶える』を手がけるのは、「アーティストが憧れるアーティスト」にして、ミニョーラのマーベル時代の同期とも言える、ケビン・ノーラン。宇宙人とUFOという、ヘルボーイとしては珍しい題材を、すばらしい筆力で描ききっています。

ルチャリブレ、呪いの屋敷、十字軍、吸血鬼、UFOなど、「王道もの」から「変わり種」まで、バラエティ豊かなラインナップで、『ヘルボーイ:捻じくれた男』と並び、ミニョーラならではのキッチュなアメリカン・ゴシックテイストを堪能できる一冊です。

2017.01.27

映画とコミックで世界最強魔導師の謎めいた素顔に迫る!
映画『ドクター・ストレンジ』&『ドクター・ストレンジ:ウェイ・オブ・ウィアード』

ソーサラー・スプリームの堂々たる銀幕デビューを見逃すな!

いよいよ1月27日より、マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)劇場作品第14作目(フェイズ3第2作目)にあたる、ベネティクト・カンバーバッチ主演の『ドクター・ストレンジ』が公開になります。
これまでのMCUでは、地球をベースにしつつ、神々の世界でありソーの故郷であるアスガルド、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーたちが活躍する宇宙空間と、ストーリーの広がりと共に、描かれる世界も広がってきました。
今作『ドクター・ストレンジ』では、魔法という要素が新たに加えられます。次元を超え、悪魔などが存在する「魔界」との繋がりを示すこの作品の登場によって、MCUは、コミックのマーベルユニバースと同様、多層的な世界観を構築することになります。MCUにとって、この上なく重要な一作と言えるでしょう。
映画『ドクター・ストレンジ』は、予告編などでもすでに描かれているように、主人公である「"天才外科医"スティーブヴン・ストレンジ」が、いかにして魔法を駆使する「"至高の魔導師(ソーサラー・スプリーム)"ドクター・ストレンジ」と呼ばれるようになったかを描く、ヒーロー誕生譚です。
「神の手」と謳われるほどの外科技術を持ち、ルックス、知性、教養、すべてにおいて“完璧”な存在だったスティーブン。しかし唯一の欠点は、その才能を鼻にかけた傲慢さでした。
ですがそんな彼はある日、交通事故によって両腕に傷を負い、メスを握れない体になってしまいます。現代医学に匙を投げられたスティーブンは、かつての栄光を取り戻すため、一縷の望みをかけてカトマンズの治療施設に赴きます。しかし、そこはただの治療施設ではありませんでした……。
具体的なストーリーは映画を観ていただくとして、マーベルユニバース最強の魔導師という荒唐無稽な存在を、MCUの他の世界とつなげ、そこに説得力を持たせるための作劇は、丁寧かつダイナミック。一気に作品世界へと引き込まれる面白さです。
スティーブンと、彼を取り巻く人々との関係性の掘り下げが綿密に行われ、人間ドラマとしても楽しめるため、オカルティックな世界観にもスムーズに入っていけます。
そして何より力を入れて描かれているのが、ドクター・ストレンジの真骨頂とも言える「魔法」の表現です。
これまでコミックの『ドクター・ストレンジ』世界で目にしてきた、幾何学的な、そして歪みのある、魔法に影響された奇妙な情景。これをどう実写において表現するかが、映画化における大きなポイントでした。
実写だからこそできる、無限回廊のだまし絵を三次元化したかのような、美しさと奇妙さが交錯した映像美は、コミックの幻想的な魔法表現とはまた違う味わいを持ち、コミックを未見の方も、コミックファンも、共に虜にする魅力をもっています。
また、BBCのテレビドラマ『SHERLOCK』で一躍人気俳優となったベネディクト・カンバーバッチの演技も秀逸です。傲慢な天才外科医から、その後マーベルヒーローたちの相談役として慕われる人格者へと成長するまでのキャラクターの変化を、見事な演技のグラデーションで見せてくれます。
今後公開されるMCU作品『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』において、重要な役割を果たすと思われるドクター・ストレンジのオリジンストーリーとして、まさにベストと言える仕上がり。必見の一作と言えるでしょう。

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ストレンジの奇妙な日常が一転、魔法界を揺るがす大事件に!

続いて、映画の公開に先駆けて発売となった『ドクター・ストレンジ:ウェイ・オブ・ウィアード』を紹介します。
本書は、アメリカ本国での『ドクター・ストレンジ』の公開(2016年11月4日公開)の約1年前となる、2015年12月からスタートした『ドクター・ストレンジ』の最新シリーズになります。すでに映画の撮影が行われていた時期なので、映画版を見据えた上でのスタートだったことは間違いないでしょう。そのため、冒頭には1963年発行の『ドクター・ストレンジ』の実質的な第1話にあたる『ストレンジテールズ』♯110の、ドクター・ストレンジの誕生譚がコラージュされ、物語の導入となっています。
これまで邦訳されてきた作品中でのドクター・ストレンジは、例えば『ニューアベンジャーズ』の切り札的な協力者であったり、またマーベルユニバースの重鎮たちで組織された「イルミナティ」の一員として大事件に対処するような、「渋めの助っ人」としての活躍が描かれてきました。
対して本書は、彼の日常が描写されています。ニューヨークの住民たちの間で噂の、悪魔祓い医師ドクター・ストレンジ。彼の住むグリニッジ・ヴィレッジのサンクタム・サンクトラムには、そんな噂を聞いた「患者」たちが、藁をもすがる思いで訪れてきます。今回、その中のひとりが持ち込んだ「病気」は、この次元に本来いないはずの怪物を原因としたものでした。時を同じくして、世界には魔法的な異変が続発。スカーレット・ウィッチやドクター・ブードゥーら魔法仲間も危惧する中、ドクター・ストレンジは、魔法界最大の危機に立ち向かうこととなるのです……。
本書は、新シリーズの1冊目であるため、ドクター・ストレンジがヒーローとして自らが住むニューヨークの人々とどう関わっているのか、彼がどのような性格で、毎日何を思い、何をして過ごしているのか……といった素顔に迫ると同時に、ユーモラスで魅力的な世界観を、楽しむことができます。
コミックファンにとっては、これまでストレンジが登場してきた邦訳作品では、ほとんど描かれてこなかった部分を知ることができますし、映画を観終わってストレンジというキャラクターが気になったアメコミ未読の方にとっても、映画のサブテキストとしては勿論、初めて読むアメコミとしても、十二分にオススメできます。

ストレンジの個性を光らせつつ、そこで起きる深刻な危機を軽妙に語るのは、ライターのジェイソン・アーロン。オカルト的な描写に偏り過ぎない、そのバランス感覚は見事です。
アートを担当するのは、ベテランのクリス・バチャロ。ドクター・ストレンジの魔法・魔界といった世界観の描写は、アーティストの個性が発揮されるわけですが、本作では、魔法界の生物などの、有機的かつ幻想的な造形などをはじめとして、それがいかんなく発揮されています。

映画公開に合わせて注目度と知名度が高まってきた魔導師ヒーロー、ドクター・ストレンジ。今後の展開を担う重要なキャラクターであることは間違いありません。この機会に、映画と共に本書を読むことで、より深くMCU、そしてマーベルユニバースを楽しんでいきましょう!

文・石井誠(ライター)

2017.01.19

DC・コミックス

アレックス・ロスの超絶アートとDCコミックス愛が炸裂!
『ジャスティス Vol.1&2』

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今回は『ジャスティス Vol.1』『ジャスティス Vol.2』をまとめてご紹介いたします。
圧倒的な画力とリアルな絵画的な表現によって、『キングダム・カム』『マーヴルズ』といった伝説的名作を手がけ、コミックアート界に絶対的な地位を築いたアレックス・ロス。
彼の手がける作品は、キャラクターがその世界で息づき生活していることがありありと伝わってくるような、体温のあるリアリティが特徴的です。
これらのアートは、ひとつひとつのシーンごとに、モデルとなる人物の写真を撮り、光の当たり具合までも研究し尽くした、ロス特有の緻密な技法で描かれています。実際のモデルを使いながらも平板なリアリズムに陥ることなく、実に活き活きとした表情で立ち振る舞うキャラクター、それに写実性とドラマ性を兼ね備えた色使いと描写が加わることで、虚構を越えた世界観を作り出しているのです。

しかし当然のことながら、このような手法をとるロスのアート制作には、他のアーティストに比べて大きな手間がかかるため、どうしても寡作になってしまいます。その結果、アレックス・ロスがコミックス本編のアートを手掛けることはなかなか無いのも事実。
そんな数少ないアレックス・ロス作品の中で、最大級のボリュームをもって描かれたのが本書『ジャスティス』なのです。
この作品制作を可能としたのは、ペンシラーにダグ・ブレイスウェイト、共同原作にジム・クルーガーを迎えたチーム編成です。アレックス・ロスの担当は共同原作とカラーリングですが、ダグ・ブレイスウェイトの高い画力、構成力が非常にマッチしており、これまでのロス作品に勝るとも劣らない超絶クオリティを生みだしています。
「ジャスティス(正義)」という直球なタイトルは、企画段階では『VS.』というタイトルでしたが、本書はその名の通り、スーパーヒーロー連合とスーパービラン連合の全面対決を通して「正義」の在り方を問う、アレックス・ロスのDCコミックスへの、ひいてはスーパーヒーローコミックへの愛情が結晶化したかのような一冊と言えるでしょう。

改心したスーパービランたちに追いつめられるジャスティス・リーグ!

物語は、スーパービランたちが繰り返し見続けている、ある「悪夢」から始まります。
地球滅亡の日、炎に包まれた世界でなすすべもなく倒れるジャスティス・リーグ・オブ・アメリカの面々。
世界が破滅してしまっては、当然ながらビランたちの生きる場所も無くなってしまいます。そんな事態に陥るまで、ジャスティス・リーグは一体何をしていたのか? この悪夢は現実のものになると考え、怒りに駆られたビランたちは、レックス・ルーサーの号令の元、リージョン・オブ・ドゥームを結成。ヒーローたちに代わって人々をより善き世界に導くため、行動を起こし始めました。
ポイズン・アイビーによる砂漠の緑地化など、今まで犯罪に使ってきた自らの能力を、人類の救済に向けるビランたち。そしてルーサーを中心としたビランたちは、「ジャスティス・リーグの面々は、十分な能力を持ちながらもそれを使ってこなかったことで、格差と貧困を肯定し続けてきたのだ」という告発を全世界に向けて行ったのです。
人々の心がジャスティス・リーグから離れる中、ビラン達は、各ヒーローの弱点をついた攻撃を仕掛け、彼らは追い詰められていきます。そして苦境の中、ヒーロー達はビランの背後にある人物がいることに気づきます。黒幕の真の目的とは何なのか? 彼らはその謎を解き、巻き返しをはかるべく行動を開始します。

正義vs.正義

この物語は『NEW52』シリーズなどDCの中心的な世界観とは異なる、本書独自の世界観で展開されています。
基調となっているのはアレックス・ロスが一番思い入れのあるシルバーエイジのデザインと設定ですが、端々に新たな設定が取り込まれていますし、物語やキャラクターの持つテーマ性は現代的なものとなっています。
またビランたちは、いつものように悪事をなそうとせず、世界を良くするために行動しようとしています。こうしたビランの「正義」に対し、傷を負いながらも勇気を奮い起こし、自分の信じてきた「正義」をもって抗しようとするヒーローたちの姿は、読む者に正義とは何なのかという問いを呼び起こすことでしょう。
またこうした大作クロスオーバーならではの、各キャラクターの異なる立場や心情の描写も奥深く、アレックス・ロスの美しい絵と相まって、一大叙事詩と呼べるようなスケール感のある物語に仕上がっています。

重厚なストーリーや絵もさることながら、それ以外にも、スーパービラン連合にハブられてしまったジョーカーや、美麗なアートで描かれるプラスチックマンとエロンゲイテッドマンの伸び人間対決(?)など、細部にネタが仕込まれており、読むたびに新たな発見があることは間違いありません。

多数のキャラクター、複雑かつ重厚な物語……と、こう説明すると、DCコミックスに対する深い知識が必要な作品と感じられるかもしれません。しかし読んでみるとまったくそんなことはありません。読みやすさは抜群ですし、むしろこの作品から読み始めても問題なく楽しめる王道の面白さで、ヒーローコミックの入り口としてもオススメできる一冊です。
何よりアメコミファンならずとも一度は触れておきたいアレックス・ロスのアートを、長編で思う存分堪能できるのです。1コマ1コマを額に入れて飾りたいくらいのクオリティのアートが、めくってもめくっても続いていく感動は計り知れません。ぜひアレックス・ロスが心血を注いで制作した、この記念碑的な作品を読んでいただきたいと思います。

文・石井誠(ライター)

2017.01. 6

マーベル・コミックス

アスガルド追放! ミヨネア破壊!
ソーはロキとDr.ドゥームの陰謀からアスガルドを救えるのか!?
『ソー Vol.3 -別離-』

今回は通販限定「マーベル・マスト・リード」シリーズ『ソー Vol.3 -別離-』を紹介します。
雷神ソーの復活と新しいアスガルドをめぐって展開してきたシリーズの締めくくりとなる一作です。

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J・マイケル・ストラジンスキーが手掛けた、ソーの復活譚である『ソー』3部作は、時系列としては『シビル・ウォー』『シークレット・インベージョン』『シージ』のメインとなる物語の裏で展開してきました。そして本シリーズで語られた新しいアスガルドの物語は、『シージ』においてメインストリームに合流、大局の鍵を握る存在としてクローズアップされていきます。

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アメリカの片田舎に再建された神々の国アスガルド

『ソー』の物語は、アスガルドで繰り返される死と再生の運命の円環「ラグナロク」を断ち、虚空に消えたはずのソーの復活、そしてアメリカのオクラホマ州上空にアスガルドを再建するところから始まりました。
『ソー Vol.1 -帰還-』においてソーは、アスガルドの完全復活のため、記憶を失い人間となって暮らしていたアスガルドの神々を捜し出し、本来の姿へと立ち返らせていきます。
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その中には女性に転生し、姿と共に心も改めたかに見えたロキの姿もありました。
しかし案の定と言うべきか本性を隠していたロキは、ソーを陥れ、アスガルドを手中に収めるべく時空を超えた暗躍を始めます。

ソー Vol.2 -邂逅-ラストにおいて、ソーはロキによって復活させられた祖父ボルと戦い、これを祖父と知らぬままに打倒。結果、肉親殺しの罪を負ってアスガルドを追放されることとなってしまいます。またボルの硬い肉体に魔法の鎚ミヨネアを振るったために、ソーの身体の一部とも言えるミヨネア自体も破損してしまいました。

ついに牙をむくロキの陰謀

『ソー Vol.3 -別離-』は、王位を失い、故郷アスガルドを追われ、ミヨネアは壊れかけという、ソーにとって凄まじい逆境から始まります。二心同体と言うべき人間体ドナルド・ブレイクの姿となり、愛する女神シフ復活のために動き始めるソー。
一方で、ソーの義弟ボールダーを新王に立てたアスガルドは、なんとDr.ドゥームの統治する国家ラトベリアへの移住を決定します。ロキと通じて便宜を図ったDr.ドゥームに裏の意図が無いはずもなく……。
一方、この『ソー』シリーズの見どころのひとつとして、浮世離れしたアスガルドの神々とアメリカの片田舎であるオクラホマの住人たちの、文化的ギャップの激しいコミカルな交流があげられます。特に女神ケルダと恋仲になった青年ビルは、このシリーズのもう一人の主人公と言うべき存在。美しい風の女神とダイナーの店員というギャップを越えて愛を貫く決意を持ったビルは、彼女を追ってラトベリアへと向かいます。
シフを救うため傷ついた姿で奔走するソー、ケルダやアスガルドの民のために行動すべく決意をするビル。はたして、二人の行動はどのような結末を迎えるのでしょうか……?

ソーの物語は、この後に展開する「ラトベリアン・プロメテウス」編(未邦訳)を経て、『シージ』で『ニューアベンジャーズ:ブレイクアウト』から続いてきたマーベル・ユニバースのメインストリームの物語と合流。巨大なクライマックスへと繋がっていくことになります。
オクラホマに再建されたアスガルドは、『シージ』におけるラストバトルの舞台となる場所です。しかしその背景に関しては、ニューアベンジャーズを中心としたストーリーの中ではあまり語られることがありませんでした。メインシリーズのフォローアップの意味でも、この『ソー』3部作は必読(マスト・リード)であると言えるでしょう。

特別収録の二編

また本書には邦訳版特別編集として、ミニシリーズとして展開された『シークレット・インベージョン:ソー』が収録されています。タイトル通り、『シークレット・インベージョン』の直前にあたる物語ですが、『ソー』シリーズの時系列的にはちょっと前後する形で、前巻『ソーVol.2-邂逅-』に収録の『ソー』v3#10(ボールダーがアスガルドの王子となるエピソード)の直後に位置しています。
地球侵攻を開始したスクラル人は、その先触れとして地球の神々が住むアスガルドに狙いを定めます。それに対し、ソーは三戦士や彼の異星の兄弟とも言える戦士ベータ・レイ・ビルと共に立ち向かうのですが、スーパースクラルのパワーの前に思わぬ苦戦を強いられることとなり……。
『シークレット・インベージョン』本編クライマックスで特に説明もなく戦列に加わっていたソーですが、その背景にはこのミニシリーズで語られた事情があったのでした。これもまた、『シークレット・インベージョン』本編を補う意味でもマスト・リードのミニシリーズです。

さらに本書には『シークレット・インベージョン:ソー』で描かれたソーとスーパースクラルの対決に合わせる形で、1967年に刊行されたソーとスーパースクラルの初対決を描いたエピソードも収録。スタン・リーとジャック・カービーというアメコミ界のレジェンドが描いたバトルのおもしろさを併せて楽しむことができます。

この『ソー』3部作は、ニューアベンジャーズを中心としたメインストリームの流れに比べて派手な対決などは少ないかもしれません。しかしソーとアスガルドの再生をテーマに、アメリカの片田舎に現れたアスガルドの神々のキャラクターを、さらに掘り下げたシリーズだったと言えるでしょう。まさにその地上から少しだけ浮いたアスガルド同様、地に足が着くようで着かない彼らの織りなす物語は、彼らのファンでなくとも楽しめるものとなっています。
勿論『シビル・ウォー』『シークレット・インベージョン』から『シージ』にまでまたがる物語のフォローアップとしても必読のこのシリーズ、3冊揃ったこの機会に是非メインストリームとクロスオーバーさせながら読んでみてはいかがでしょうか。

文・石井誠(ライター)

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ドクター・ストレンジ:ウェイ・オブ・ウィアード

ジェイソン・アーロン=著

クリス・バチャロ=絵

御代しおり=翻訳

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