ヴィレッジブックスのアメリカンコミックス情報サイト

2016.12. 2

正体を明かしたスパイダーマンに襲い掛かるヴィランたち!
『ピーター・パーカー スパイダーマン:シビル・ウォー』
雇われヒーロー集団は内戦にどうかかわったのか?
『ヒーローズ・フォー・ハイヤー:シビル・ウォー』

通販限定で展開してきた「シビル・ウォー・クロスオーバー・シリーズ」も、ついに最終シリーズとなる第3弾に突入。シリーズはこれまで、第1期7点、第2期7点、一般発売された『ニューアベンジャーズ:シビル・ウォー』の計15点が発売され、8月からスタートした第3期7点によってタイインコミックスが邦訳として揃うことになります。

今回は、第3期の1冊目『ピーター・パーカー スパイダーマン:シビル・ウォー』と2冊目の『ヒーローズ・フォー・ハイヤー:シビル・ウォー』をまとめて紹介していきましょう。

『ピーター・パーカー スパイダーマン:シビル・ウォー』

491291.jpg
『シビル・ウォー』のキーパーソンだったスパイダーマンが主役のタイインは、『アメイジング・スパイダーマン:シビル・ウォー』としてすでに発売されています。ここではピーターが、どのような経緯で賛成派から反対派に翻意することになったのかが克明に描かれました。そして本書『ピーター・パーカー、スパイダーマン:シビル・ウォー』は、その翻意の理由をさらに深掘りする1作と言えます。いうなれば、前者がスパイダーマンのヒーローとしての「公」の部分が描かれていて、『ピーター・パーカー、スパイダーマン:シビル・ウォー』は、「私」の部分が描かれているのです。

本作では、ピーターが世間に正体を明かしたために、事件に巻き込まれる3人の女性の物語が展開されます。その3人とは、ピーターの当時の妻であるメリージェーン・ワトソン、ピーターの叔母であり育ての親であるメイ・パーカー、そしてピーターのかつての恋人だったブラックキャットことフェリシア・ハーディ。

本作は2部構成となっています。第1部はスパイダーマンが自身の正体を世間に明かした直後、そして第2部は、反対派に与する道を選んだ後が舞台です。正体を知ったカメレオンらスパイダーマンに深い恨みを持つヴィランたちは、その妻のMJ、叔母のメイまでも標的にします。自分だけでは彼女達を守りきれないと考えたピーターは、かつての恋人であるブラックキャットに、MJやメイを守って欲しいと頼みます。正体を明かしたことで大きく変わってしまった状況の中、彼らはどのように考え、行動するのか? ピーターだけでなく、3人の女性の思いが描かれる物語となっています。

『ヒーローズ・フォー・ハイヤー:シビル・ウォー』

491292.jpg
ヒーローズ・フォー・ハイヤー(雇われヒーロー達)と言えば、ルーク・ケイジの二つ名(ヒーロー・フォー・ハイヤー)であり、彼とコンビを組んだアイアン・フィストが立ち上げたヒーロー事務所の名称ですが、本作はその二人は関係なく、お金をもらってヒーロー活動をするチームであるというだけです。さらに登場するヒーローは、ブラックキャット以外はマイナーなキャラクターばかり。なら地味で面白くないのか……と思ってしまいそうですが、読んでみるととても楽しめる内容になっています。

本作『ヒーローズ・フォー・ハイヤー:シビル・ウォー』、『シビル・ウォー』のスタートに合わせて立ち上げられたシリーズで、7人からなるメンバーで構成されたチームものです。

元ニューヨーク市警の警官で爆破事件によって右腕を失い、トニー・スタークが作ったバイオニックアームを取り付けたミスティ・ナイト(NETFLIXのドラマ『ルーク・ケイジ』でも活躍しているキャラクター)。

その相棒の、日米ハーフで、侍の血を引く祖父から武道を学んだ日本刀使いコリーン・ウイング。

この2人を中心に活動するヒーローチームが、新生「ヒーローズ・フォー・ハイヤー」です。彼女たちには、内戦に突入したほかのヒーローのような思想的な背景はなく、混乱に乗じて暴れるヴィランの鎮圧や、潜伏している超人登録法反対派のヒーローたちの捜索などを行うことで報酬を得るという、清々しいくらい分かりやすい理由で行動します。そんな「金のためのヒーロー活動」の最中、移植すれば別人の外見に変身できる人造臓器の捜査をきっかけに、彼らは大きな事件に巻き込まれていきます。

これまでのシビル・ウォー・クロスオーバー・シリーズの多くは、賛成、反対、中立、不干渉という立場をとる各キャラクターの主義主張を掘り下げる物語がほとんどで、結果、重厚な内容のものになっていました。それに対して、登録法への主義主張がそれほどないヒーローたちの姿を描いているのが、『ヒーローズ・フォー・ハイヤー』だと言えるでしょう。彼女たちは超人登録法の賛成派寄りながらも、反対派と敵対しません。昆虫を自在に操る中年男のハンバグや、30年以上前のカンフーブーム時に登場したシャン・チーといったメンバーが醸し出すコミカルさは、『シビル・ウォー』シリーズに漂う重い空気の中では、肩の凝らない清涼剤的な雰囲気を作り出しているように思えます。ヒーローコミックスの新たな一面を感じさせてくれる1冊と言えるかもしれません。

『ピーター・パーカー スパイダーマン:シビル・ウォー』と『ヒーローズ・フォー・ハイヤー:シビル・ウォー』。この2冊を読めば『シビル・ウォー』の持つ奥深さをより実感できるはずです。

2016.11.22

マーベル・コミックス

監査官の追及からベイダーは逃れられるのか?
『スター・ウォーズ:ダースベイター 偽りの忠誠』

12月14日の公開まで1ヶ月を切った、『スター・ウォーズ』のスピン・オフ作品となる『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』。最新の予告編では、ついにダース・ベイダーも登場し、ファンとしては盛り上がらずにはいられない状態です。そして何より『エピソードⅣ/新たなる希望』につながる物語ということもあって、昨年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に負けず劣らず事前の期待値が高まっているのではないでしょうか。

そんなスター・ウォーズが世間的に盛り上がる中、今日は『エピソードⅣ/新たなる希望』直後のダース・ベイダーを描くコミック版『ダース・ベイダー』シリーズの第2弾となる『スター・ウォーズ:ダースベイター 偽りの忠誠』を紹介します。

491310.JPG


















自身が計画した強奪事件を隠蔽&捜査!

491264.jpgのサムネール画像
シリーズ1作目『スター・ウォーズ:ダース・ベイダー』((紹介記事はこちら、『エピソードⅣ/新たなる希望』でのデス・スター破壊により降格されてしまったダース・ベイダーが、失地回復すべく極秘で行動をおこす姿が描かれました。ベイダーは女性盗賊考古学者のドクター・アフラ、拷問ドロイドのトリプルゼロ、暗殺アストロメクドロイドのBT-1と行動を共にし、ドロイドで構成された私兵部隊を作り上げます。その一方でベイダーは、賞金稼ぎのボバ・フェットを雇い、デス・スターの破壊に貢献したある反乱軍パイロットの正体を探らせていました。その結果、探していたパイロットが、それまで存在をも知らなかった実の息子であることがわかり、ベイダーは息子を自分のもとに引き入れることを考えるようになります。

1作目でのこうした状況を踏まえてスタートした本作。その冒頭で、ベイダーはドクター・アフラと共にタトゥイーンに降り立ち、かつてルークが住んでいた家、そしてオビ=ワン・ケノービが隠遁していた住まいを訪れます。そこでベイダーは、彼らのこれまでの生活と、ルークとボバ・フェットとの戦いの痕跡から、ルークがまだジェダイとなるための修行を積んでいないことを知ります。ベイダーはルークを探索すべく、ドクター・アフラに新たな極秘任務を任せます。

それはベイダーが自ら押収し、帝国軍の輸送船に運ばせていたクレジットを、自らの目的達成の資金とするため、強奪するというものでした。ドクター・アフラはその任務を遂行するため、名うての賞金稼ぎを雇い、クレジットの強奪に成功します。しかしその後、ベイダーには自身が企てた強奪事件の犯人を捕まえるという任務が与えられます。有能で抜け目のないサノス監査官に見張られながら、ベイダーはドクター・アフラの跡を追うことになるのですが…。

強奪作戦の隠蔽と捜査を同時に行うベイダーは、どう事態を収束させていくのでしょう?事態をうまく乗り切れるかと思いきや、すぐに新たな不都合が生まれ、それを解決するためにまた行動し…という目まぐるしい展開は、これまでのスター・ウォーズ作品にはないものです。

また、1作目同様、ダース・ベイダーとドクター・アフラの奇妙なバディ関係が印象的な本作ですが、それ以上に目を引くのが、ダース・ベイダーのルークへの執着です。ルークのこれまでのいきさつを知り、感情が揺さぶられるベイダー。それは、彼が人間的な感情を取り戻しているようにも見えます。そして、その思いは『エピソード6/ジェダイの帰還』の終盤の展開にもつながります。『スター・ウォーズ:ダースベイター 偽りの忠誠』は、そんなベイダーの心の動きを再確認させてくれる1冊となっています。

文・石井誠(ライター)

2016.11.16

マーベル・コミックス

『スパイダーバース』で異彩を放ったあのスパイダーマンが登場!
『スーペリア・スパイダーマン:ワースト・エネミー』

今年の邦訳アメコミの中で大きな話題となった、多元宇宙のスパイダーマンたちとインヘリターズとの次元を越えた戦いを描いた『スパイダーバース』

その物語の中で、重要なポジションを占めたキャラクターと言えば、ピーター・パーカーの身体にDr.オクトパスの精神が宿った「スーペリア・スパイダーマン」です。ピーター・パーカーの超人的な体と、冷酷かつ合理的な頭脳を駆使して戦う姿は、「スーペリア」(より優れた)の何に恥じぬキャラクターであったことは間違いないでしょう。そのため、多くのスパイダーマンの中でもひときわ強い存在感を発揮しました。

以前の『スパイダーバース』のレビューで、ピーター・パーカーとDr.オクトパスと精神が入れ替わった経緯については簡単に紹介しましたが、その衝撃的なエピソードが収録された待望の『スーペリア・スパイダーマン:ワースト・エネミー』が刊行されたので、今回はその辺りのストーリーを解説していきたいと思います。

491309.jpg

節目の記念号で起きた「大事件」

本書に掲載されている『アメイジング・スパイダーマン』誌の記念となる通算700号の発売は2013年の2月でした。そして、その前年である2012年は、1962年に誕生したスパイダーマンの生誕50周年となるアニバーサリーイヤーで、アンドリュー・ガーフィルド主演の映画『アメイジング・スパイダーマン』は、その記念作品でもありました。2012~2013年はスパイダーマンのアニバーサリーとして盛り上がっている時期だったのです。

そんな「スパイダーマン、おめでとう!」という雰囲気の最中、マーベル・コミックスが発売したのが、本作の冒頭に収録された「アメイジング・スパイダーマン」#698です。

スパイダーマンとの長年の戦いによってオットー・オクタビアスの身体は限界に達し、余命1年と宣告されていました。急速に衰えていく身体を機械で補強しながら、スパイダーマンに戦いを挑み続けていましたが、勝利することはできず、重犯罪者専用刑務所ラフトに収監されてしまいます。生命維持装置につながれたオットーの命の灯火は消えようとしていました。そんな状況の中、彼は宿敵であるピーター・パーカーの名を呼びます。

宿敵の臨終に呼び出されたスパイダーマンはオットーと面会しますが、そこでオットーは「僕はピーター・パーカーだ」と呟きます。

ラフトに収監されていたオットーは、自分の意思で遠隔操作できるオクト・ボットをピーターに差し向け、自分の精神と記憶をピーターの脳に上書きし、逆に瀕死の自分の脳にピーターの精神と記憶を上書きすることで、互いを入れ替えることに成功していたのでした。ピーターの身体に精神を移したオットーは、身動きすらできないピーターに勝利を宣言します。

瀕死の身体に囚われたピーターは、オットーを止めるために、オクト・ボットを使って3人のヴィランを集め、ラフトからの脱走。その後、オットーの秘密基地と機材を使い、ピーターは自身の身体を取り返すために行動します。しかし、長年の戦いの経験から相手の手の内を読み尽くしているオットーによって、ピーターはさらなる窮地に陥ります。

オクト・ボットを使った再度の精神交換も失敗に終わり、ピーターは最期の時を迎えることになります。しかし、精神交換は失敗してしたものの、オクト・ボット経由でピーターの思考が流入したことにより、オットーは死の直前にあるピーターの人生を追体験することになります。

ピーターの過酷な運命を知り、その責任の重さに耐えられないと思うオットー。大いなる力には、大いなる責任が伴う――ピーターはその言葉と共に、記憶と経験の全てをオットーに継承し、オットーの肉体と共に力尽きます。そして、その意思を継いだオットーは、新たな善を成すためのスパイダーマンとして生きることを決意します。ここに、スパイダーマンを越えたスパイダーマン、スーペリア・スパイダーマンが誕生したのです。

これまでにない新たなヒーローを描くシリーズ!

700号記念&スパイダーマン生誕50周年という2つの大きなアニバーサリー、その盛大なお祝いのラストを飾るはずのエピソードは、ピーターの死、Dr.オクトパスがスパイダーマンになるという衝撃の展開で幕を閉じます。

筆者は当時、アニバーサリーということもあって、本書のコミックブックをリアルタイムで読んでいましたが、「ピーターが苦闘の末に自身の身体を取り戻し、ハッピーエンドを迎えるだろう」と思いこんでいました。

本シリーズの途中、ピーターが、ベン叔父さん、グウェン、ステーシー警部ら、かつて救えなかった人たちが平和に暮らす「あの世」を目撃します。そうした感動的な挿話や、所々で現れるベン叔父さんの幻影、こうした事象と相対することで、スパイダーマンの700号にわたる戦いを総括し、死と向き合ったからこそ生み出された新たなスパイダーマンの生き方が示される……そんな展開を予想していたわけですが、その予想は大きく裏切られ、びっくりした記憶があります。

そして、700号続いてきた『アメイジング・スパイダーマン』はこの号をもって終了し、物語は『スーペリア・スパイダーマン』として新たにスタートします。この作品は、「善」と「悪」を相対化した、これまでにないヒーローを描く新しい視点をもったシリーズです。

ピーターの意思を継いだとはいえ、オットーはピーターとはまったく異なる形で事件を解決していき、同時に、距離を置いていたメリー・ジェーンとの関係にも変化が訪れます。仕事とプライベートの両立に失敗していたピーターと、その両立を成し遂げようとするオットー。ピーターとの対比が際立つこの展開は、スパイダーマンが好きな人ならより楽しめるはずです。一方で、オットーの悪の側面も垣間見えます。倫理観の無さ、自己顕示欲の強さから、敵を過度に叩きのめしたりと、やり過ぎてしまい、ピーターとは違った形で読者をヤキモキさせてくれます。こうしたオットーの物語は、これまで描から続けてルーチンになりがちだったピーターの日常への、カンフル剤として機能しているとも見えます。

スパイダーマンの物語としては異色で反則ギリギリのストーリー。読者の予想を大きく裏切るような大胆な試み。アメコミならではの楽しさを味わえる1作になっていると思います。

文・石井誠(ライター)


2016.11. 4

マーベル・コミックス

ドラマ版「ルーク・ケイジ」をより楽しむための1冊!
『ルーク・ケイジ:無慈悲の街』

今までのNETFLIX×マーベルドラマとはひと味違う!

マーベル・シネマティック・ユニバースと世界観を共有するNETFLIX×マーベルのオリジナルドラマシリーズ。その最新作『ルーク・ケイジ』の配信が、9月30日よりスタートしました。

これまでのNETFLIX×マーベルのオリジナルドラマシリーズは、『デアデビル』ではニューヨーク郊外の街ヘルズ・キッチンを舞台に、マフィアが牛耳る黒社会との戦いをクライムアクションとして描き、『ジェシカ・ジョーンズ』では考えるだけで相手を操ることができるキルグレイブとの息詰まる戦いをサイコサスペンス的なタッチで描写してきました。全年齢向けのヒーロードラマとは違う、大人の雰囲気の作品となっているのも特徴です。

最新作の『ルーク・ケイジ』も、『デアデビル』、『ジェシカ・ジョーンズ』と同様、大人向けのヒーロードラマとなっています。

ドラマ版『ルーク・ケイジ』は、『ジェシカ・ジョーンズ』の数ヶ月後から物語が始まります。女探偵ジェシカがキルグレイブを倒すことに協力したルークは、戦いの中でキルグレイブに操られてしまい彼女を攻撃。洗脳から逃れるためにわざとジェシカに至近距離でショットガンで撃たれ、意識不明となってしまいます。その後、ルークはジェシカの知らないうちに意識を回復したものの、彼女には会わずにそのまま姿を消したのでした。ジェシカの元を去った、ルークはどうしていたのでしょうか? ドラマ版『ルーク・ケイジ』はそこから物語が始まります。

その後ルークは、ニューヨークのマンハッタンの北部にあるハーレム地区に移り住んでいました。ハーレムは、アフリカ系アメリカ人の文化が根付き、彼らのビジネスの中心とも言える街。その街でルークは、かつてマフィアの大物にまでなりながら、今は街のみんなに愛される理髪店を経営するポップのもとで昼間は働き、夜はハーレムの黒社会につながる男、コットンマウスが経営する店で皿洗いをして戦いとは無縁の日々を過ごしています。そこでは、どんな物理的な攻撃をも跳ね返す無敵の肉体と、超人的なパワーを隠していました。

しかし、ポップの店で面倒を見ていた黒人青年が、コットンマウスが牛耳る闇のビジネスに関わったことからそうした日々は終わりを迎えます。ルークは、コットンマウスに追われる青年を救うために、再び自分の能力を使うことを決意します。

ドラマ版『ルーク・ケイジ』は、黒人社会の中心とも言えるハーレムを舞台に、黒人の主人公が、黒人のマフィアのボスを相手に戦うストーリーとなっています。そこには黒人が抱える生活の問題、黒人だからこその誇りなど、黒人を取り巻く状況が詳細に描写されています。そして、90年代の黒人ヒップホップを中心とした楽曲がドラマを彩ります。

その雰囲気は、かつて1970年代前半にアメリカで生まれた、アフリカ系アメリカ人に向けた映画ジャンル「ブラックスプロイテーション」を現代に置き換えたようです。黒人のヒーローを描くのならば、黒人文化・黒人社会も描写しようとしているのが、今までのNETFLIX×マーベルドラマとはひと味違うポイントです。

本シリーズの第4話では、ルーク・ケイジが超人的な能力を手に入れた経緯も語られています。あの初期のルーク・ケイジの、黄色いシャツに鎖のベルト、頭と腕に金属の飾りを付けた姿も、思わぬ形で登場するので、アメコミファンは必見です。

オリジンからミニシリーズまで。
ドラマをより深く楽しめる傑作選!

そんなドラマ版『ルーク・ケイジ』をこれから見る人/もう見た人に読んでもらいたいのが、ルーク・ケイジの傑作エピソードのアンソロジー『ルーク・ケイジ:無慈悲の街』です。

491308.jpg
ルーク・ケイジと言えば、邦訳『ニューアベンジャーズ』シリーズで、シリーズを通してチームの中心として活躍する姿が描かれてきました。

戦いの高い経験値、超人的な身体能力、そして時に仲間を引っ張っていくリーダーシップ。一方で妻子をもつ(妻はジェシカ・ジョーンズ)家庭的な部分も持ちあわせているというキャラクターで、物語内で大きな存在感を示してきました。しかし、チームものでの活躍が多かったため、邦訳作品では彼の「黒人ヒーロー」ぶりをあまり見ることができなかったのも事実です。

本作『ルーク・ケイジ:無慈悲の街』は、そうしたルーク・ケイジの本来の姿にクローズアップしています。ここからは各エピソードを紹介していきましょう。


『アベンジャーズ・オリジンズ:ルーク・ケイジ』(2012年)
アベンジャーズメンバーのオリジンを描く短編のひとつとして、彼がどのような経緯で能力を獲得し、現在に至っているのかが描かれます。1970年代に描かれたオリジンストーリーを現代風に描きなおしているため、読みやすく、彼ののオリジンを把握するにはもってこいの物語となっています。

『ニューアベンジャーズ:ルーク・ケイジ』(全3話・2010年)
このミニシリーズは、タイムライン上では、善と悪との最終決戦を描いた『シージ』が終了した直後に位置しています。過去にかかわりのあった黒人青年の窮地を救うべく、フィラデルフィアに向かったルークは、そこでマフィアを率いるスーパーヴィランと対峙します。黒人問題に対して切り込んだ描写もなされていて、ルーク・ケイジらしい物語として楽しめる内容となっています。

『デアデビル:ケイジマッチ』(2010年)
ルークがまだティアラをつけている時期を舞台に、盟友であるデアデビルとの関わりを描いた短編です。ある事件をきっかけに、ルークとデアデビルはどちらが能力的にすぐれているか、リングで1対1の勝負をすることを決めます。ヒーロー同士が勝負の中で互いへの理解を深めるというちょっと古風な展開が楽しめる作品です。

『シチズン・ケイジ』(2009年)
ルークと妻のジェシカとの関係性が楽しめる1作です。地域の区長になるよう勧められたルークは、「自分は柄じゃない」と断るのですが…。9ページほどの短編です。

『ヒーロー・フォー・ハイヤー』#1(1972年)
ルーク・ケイジの初登場エピソードです。この作品は先述の「ブラックスプロイテーション」の全盛期に描かれています。アフリカ系アメリカ人が主役として活躍する「ブラックムービー」の影響を強く受けていて、当時の黒人差別や労働環境も言及されており、現代とは異なるその時代の雰囲気を感じ取ることができるはずです。また、ドラマで登場するキャラクターの多くが本話で登場するので、設定の違いなどを確かめるのも楽しいと思います。

ルーク・ケイジは「黒人ヒーローもいた方がいい」というステレオタイプな発想から生まれたヒーローではありません。当時のアメリカ社会で横行していた黒人差別とそれへの抵抗運動という、時代性が反映される形で生まれたキャラクターなのです。人種差別と正面から向き合い、黒人であることに誇りを持ったヒーローこそが、ルーク・ケイジであって、だからこそ、ルーク・ケイジを主人公としたドラマを作るのなら、アフリカ系アメリカ人としてのアイデンティティを前面に出したものが必要だと、製作者たちは考えたのでしょう。

ヒーローものとしても楽しめ、アメリカの黒人文化も知ることができる本書を読むことによって、ドラマ版『ルーク・ケイジ』もより深く理解することができるはずです。

文・石井誠(ライター)

2016.10.19

メサイアシリーズ、ついに完結!
『X-フォース/ケーブル:メサイア・ウォー』

マーベル・ユニバースをより深く理解するための通販限定コミックスシリーズ「マーベル・マスト・リード」。2015年5月~2016年5月にわたり7冊を刊行した第1期が終了し、2016年7月から第2期がスタートしました。

第2期の冒頭を飾るのは、現在の邦訳『X-MEN』シリーズにおいて、欠けていた重要なピースである『X-フォース/ケーブル:メサイア・ウォー』VOL.1 & VOL.2です。

では、本作を含めた『X-MEN』クロスオーバー作品について、時系列順に解説していきましょう。

X-MEN:メサイア・コンプレックス

491127.jpgのサムネール画像
491128.jpgのサムネール画像














『X-MEN/アベンジャーズ:ハウス・オブ・M』における「M-デイ」の結果、全世界のミュータントの人口は数百人にまで減少し、ミュータントは苦難の時を迎えます。そんな中、ミュータントに朗報が届きます。それは、「M-デイ」以降、はじめてミュータントの子供が生まれたというものでした。

そのミュータントの救世主となる子供を巡り、善のミュータントチームであるX-MENと悪のミュータント集団マローダーズによる争奪戦が勃発。その戦いが描かれたのが、「メサイアシリーズ」3部作の第1部となる『X-MEN:メサイア・コンプレックス』(通販限定)でした。

善と悪のミュータントが激しく戦いを繰り広げる中、いち早く子供を保護したのは、X-MENのリーダーであるサイクロップスの息子、ケーブル。X-MENとマローダーズの両陣営に追われ、さらにその子供の抹殺を目論むビショップの追撃をかわしたケーブルは、物語の最後にサイクロップスから子供を託されます。そして、ケーブルが子供を連れて未来に旅立ったところで『メサイア・コンプレックス』は幕を閉じます。
(以前のレビューはこちら

アベンジャーズ/X-MEN:ロード・トゥ・ユートピア
アベンジャーズ/X-MEN:ユートピア

491210.jpgのサムネール画像
491214.jpgのサムネール画像














時系列的には、次に「メサイアシリーズ」3部作の第2部にあたる『X-フォース/ケーブル:メサイア・ウォー』、そしてその次に『アベンジャーズ/X-MEN:ロード・トゥ・ユートピア』『アベンジャーズ/X-MEN:ユートピア』(2点とも通販限定)が位置します。これら作品はほぼ同時期に進行していますが、時間軸が違います。『アベンジャーズ/X-MEN:ロード・トゥ・ユートピア』『アベンジャーズ/X-MEN:ユートピア』は、ケーブルと子供が未来へ旅立った後の、「現代」が舞台となっています。

ミュータント排斥を訴える差別的なデモに反発した一部のミュータントの怒りが暴動へと発展し、それを鎮圧するべく、政府公認のヒーローチームとなったダーク・アベンジャーズが出動。さらに、新たに組織された「ダークX-MEN」によって、ノーマン・オズボーンは権力強化を図ろうとしていました。その戦いの裏で、サイクロップスはサンフランシスコの沖合に政府が介入できないミュータントの聖地となる「ユートピア」を浮上させる計画を進行させます。この作品では、ミュータントの新たな活動拠点の誕生が描かれました。

X-フォース/ケーブル:メサイア・ウォー

491285.jpg
491286.jpg














現代でそうした攻防が行われている頃、未来に旅立ったケーブルと救世主たる子供がどのような状況にあったのかを描いているのが、本日ご紹介する『X-フォース/ケーブル:メサイア・ウォー』(Vol.1/Vol.2)(通販限定)です。

ケーブルは、未来世界のニューリバティという隠れ里に逃げ込み、そこでホープという女性と出会い結婚。夫婦で子供を育て上げます。しかし、里を急襲した昆虫人間によってホープは死亡、ケーブルは妻の名を子供に付けます。そして、それから2年後から物語は始まります。

昆虫人間との戦いが激しさを増す中、そこから離れるためにケーブルはホープとさらに未来へ移動します。一方、ホープはミュータントに破滅をもたらす存在だと考えるビショップは、ケーブルのクローンであるストライフと手を組み、ケーブルを追跡します。

この状況を知った現代のサイクロップスは、ケーブルとホープを守るために、ウルヴァリン、アークエンジエル、ドミノ、ウォーパス、X-23、バニッシャー、エリクサーというX-MENの中でも攻撃的なメンバーで組織された特殊部隊「X-フォース」が送り込みます。X-フォースと合流したケーブル/ホープ、さらに未来世界のデッドプールも加わり、ビショップ&ストライフとの戦いが繰り広げられていきます。そして、この戦いには、長きにわたって眠りについていた最強クラスの力を持つあるミュータントもが加わることになるのです。

本作のポイントは、「ケーブルとホープの絆はどう築かれていったのか」にあります。のちの作品で描かれる彼らの間の強い絆はどう育まれたのかが、本作では描かれているのです。

もうひとつのポイントは、ケーブルと同じく未来からやって来て、かつては共に戦ったことがあるビショップの思想です。

『X-フォース/ケーブル:メサイア・ウォー』Vol.2では、ビショップの過去を描いた物語が収録されています。本作では彼の来歴、そして彼の家族も描かれており、『X-フォース/ケーブル:メサイア・ウォー』本編と併せて読むことで、これまでその行動原理がわかりづらかったビショップの心情が理解できるはずです。

X-MEN:セカンド・カミング

491129.jpgのサムネール画像
491130.jpgのサムネール画像















この未来世界を舞台にした戦いの後、ケーブルとホープはさらなる放浪の旅を続け、ホープが16歳となった時に現代へと戻ります。それが、「メサイアシリーズ」3部作の締めくくりとなる『X-MEN:セカンド・カミング』Vol.1/vol.2(通販限定)です。
(以前のレビューはこちら

ホープとケーブルが旅立ってから1年が経過した現代を舞台に、ミュータントの殲滅を目論むバスチオンからホープを守り抜く戦いが描かれます。『メサイア・コンプレックス』と『セカンド・カミング』だけでも物語を十分に楽しむことはできますが、『メサイア・ウォー』も読むことによって、ケーブルとホープの絆の深さが理解できますし、『セカンド・カミング』のラストシーン、そして『AVX:アベンジャーズ VS X-MEN アルファ&オメガ』(以前のレビューはこちらにおけるケーブルの登場もより感慨深いものとして見ることができるはずです。

491262.jpgのサムネール画像
491226.jpgのサムネール画像














①『メサイア・コンプレックス』
②『ロード・トゥ・ユートピア』/『ユートピア』
③『メサイア・ウォー』
④『セカンド・カミング』
⑤『AVX:アベンジャーズVS X-MEN アルファ&オメガ』
(*『AVX:アベンジャーズVS X-MEN アルファ&オメガ』『AVX:アベンジャーズVS X-MEN』シリーズは、一般書店にて購入可能) 

上記のタイムライン順に読んで、ホープの波乱の生き様とX-MENの戦いを体感してみてはいかがでしょうか?

文・石井誠(ライター)

MENU

BACK NUMBER

ジャスティス Vol.1

ジム・クルーガーほか=著

アレックス・ロスほか=絵

秋友克也=翻訳

NEW